2016 Fiscal Year Research-status Report
助産モデルで開発した分娩進行を診断するアセスメント・ツールの妥当性の検証
Project/Area Number |
16K12137
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
渡邉 竹美 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (90279919)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 助産師 / 経験知 / 助産モデル / 無痛分娩 |
Outline of Annual Research Achievements |
分娩進行を判断する助産師の経験知は,医学モデルの分娩の3要素(産道,娩出力,娩出物)に産婦の主観的体験である産痛を加えた4要素で構成された助産モデルである.助産モデルで開発した分娩進行を診断するアセスメント・ツールの有用性を検証することである. 妊娠37週以降の単胎・頭位・経腟分娩・日本人の条件を満たし,無痛分娩を行った37名を対象とした後方視的調査である.先行研究で使用した分娩進行を観察する19項目についてパルトグラムを用いてデータ収集を行った.対象者の出産経験は,初産婦20名(54.1%),経産婦17名(45.9%),無痛分娩の理由は希望19名(51.4%),緊張が強い17名(45.9%),医学的適応1名(2.7%)であった.麻酔方法は硬膜外麻酔22名(59.5%),脊椎麻酔1名(2.7%),CSEA14名(37.8%),分娩経過は陣痛誘発27名(73.0%),陣痛促進10名(27.0%)であり,35名(94.6%)は自然娩出であった. 19項目の観察頻度は,経産婦では19項目すべてで観察可能であったが,初産婦では「間欠時にも全身に力が入る」「外陰部痛」「顔や全身の発汗」の3項目は観察不可能であった.しかし,「いきみや努責が入る」「肛門部への圧迫感」は,初産婦では16名(80.0%),15名(75.0%),経産婦では10名(58.8%),13名(76.5%)で観察可能であった.先行研究では,助産モデルは産婦の主観的体験である産痛を加えた4要素で構成されていると報告した.しかし,無痛分娩では産痛はコントロールされているため,産婦の主観的体験は子宮収縮や娩出物による触覚であり,「産痛」を「触覚」に置換することで,産痛をコントロールした無痛分娩であっても,分娩進行を判断する経験知をbaseに作成した観察項目を用いた分娩進行の診断は可能であると考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分娩進行を判断する助産師の経験知は,医学モデルの分娩の3要素(産道,娩出力,娩出物)に産婦の主観的体験である産痛を加えた4要素で構成された助産モデルであると報告した.しかし,このモデルでは無痛分娩の観察はできないことになる.無痛分娩の後方視的調査で,助産モデルの「産痛」は,産婦の身体感覚である「触覚」に置換可能であることが示唆された.そのため,助産モデルは無痛分娩の観察および分娩進行の診断にも適用可能であり,無痛分娩も含めたアセスメント・ツールへの洗練が可能であると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
助産モデルで開発したアセスメント・ツールを活用してもらうために,研究協力施設を開拓し,研修会およびデータを集積していく.また,痛みをコントロールした「無痛分娩」を観察し,データを集積していく.
|
Causes of Carryover |
無痛分娩を管理する麻酔専門医へのヒアリング,および無痛分娩の分娩管理頻度の多い施設に勤務する助産師へのヒアリングが行えなかったため,それらの経費は翌年に繰り越しとなった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
無痛分娩を管理する麻酔専門医へのヒアリング,無痛分娩の管理経験が豊富な助産師へのヒアリングのための旅費およびヒアリング協力者(麻酔科医,助産師)への謝礼を予定している.
|