2016 Fiscal Year Research-status Report
ICTを活用した小児1型糖尿病患者への糖尿病自己管理教育支援の効果
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16K12146
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
薬師神 裕子 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10335903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 洋次 愛媛大学, 医学系研究科, 助教(特定職員) (90780734)
森貞 亜紀子 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (70773852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小児糖尿病 / ICT / 糖尿病自己管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小児 1 型糖尿病患者の自己管理行動の確立を目的とし,タブレット型携帯端末等の情報通信技術(ICT)を用いた小児糖尿病教育支援システムをより活用可能なものに発展させることである。平成 28 年度は,以下の3点について計画し研究を進めた。1)ICT を活用した糖尿病自己管理教育システムに活用可能なアプリケーションの検討:海外・国内の先行研究を基盤に,ICT を活用した糖尿病自己管理教育システムに活用可能なアプリの種類,目的,エビデンスなどの医学的評価と有用性について文献検討した。海外では、思春期1型糖尿病患者を対象にICTを活用したコーピングスキルトレーニング(TEENCOPE)やSKYPEを活用した療養支援をおこない、療養行動とHbA1c値への影響を検討しており、ICTを活用した療養支援の効果が期待されることが明らかになった。次に、現在,糖尿病患者が利用できる日本で開発されている糖尿病の療養管理アプリケーションについてWEB上で検索した。ダウンロード件数が4万人と多く、医学的評価も高い「スマートe-SMBG」が活用可能と判断した。e-SMBGの開発者から協力を得て,スマートe-SMBGに「こどもモード」を搭載し,糖尿病サマーキャンプで実際にアプリケーションの試用を行った。 2)タブレット型携帯端末に装備する e-糖尿病手帳及びデジタル教材の開発:小児糖尿病患者の自己管理行動の確立に必要となる糖尿病の病態,インスリン注射,血糖測定,食事療法,学校生活を送るうえで必要となる知識や技術に関する内容を検討し,子どもの発達段階に合わせた「小児用 e-糖尿病手帳」として活用可能なデジタル教材について検討した。今年度は,インスリンの注射手技や血糖測定方法について,ビデオ教材の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに開発した糖尿病自己管理支援システム用の専用ホームページは、開発者の逝去に伴い、継続使用が困難となった。したがって、今回の研究で活用する専用ホームページは、ソフトの不具合やウイルス対策、また、新しい携帯や端末の機種にも適用できるようソフトウエアのバージョンアップに随時対応している、アークレイ社の「糖尿病管理e-SMBGクラウド」を活用することにした。このシステムは、患者がスマートフォンやタブレット型携帯端末から、血糖値、インスリン量、食事量、運動量などをe-SMBGから随時入力すると、患者と医療者双方が、グラフ化されたデータをホームページ上で閲覧・集中管理できる医療クラウドである。医療データを取り扱うためのセキュリテイ対策も取られており、安全が確保されている。 今回、新たに搭載された「こどもモード」をサマーキャンプで、小学生から高校生に試用してもらったが、大変好評であり「入力のしやすさ」「画面のみやすさ」ともに、5段階評価で4段階以上の評価を得た。また、タブレット型携帯端末画面上で見れる血糖値のグラフを活用することで、血糖値の変動を視覚的に子ども自身が学習できるため、自分の血糖値管理に興味を示すことが可能になった。 今後、e-SMBGの「こどもモード」の本格的な活用と合わせて、タブレット型携帯端末に装備する e-糖尿病手帳及びデジタル教材の開発を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.糖尿病自己管理学習用のデジタル教材の開発 糖尿病の自己管理に必要な基本的知識(インスリン注射の手技、血糖測定の手技、低血糖/高血糖が起こる要因とその対処方法、学校生活における工夫、災害時の対応方法など)継続的に楽しく活用できる糖尿病自己管理学習用のデジタル教材をさらに発展させ、知識や技術の定着を明らかにする。 2.ICT を活用した長期的な糖尿病教育の効果の検討 小児糖尿病キャンプ後 1 年間にわたりタブレット型携帯端末の継続的な活用を行う。コントロール群を用いたランダム化比較試験を行い、小児 1 型糖尿病患者へのICT 活用の有用性と教育効果を明らかにする。 (1)対象者:インスリン治療を行っている小学校 3 年生~高校生までの小児 1 型糖尿病患者 (2)研究デザイン:タブレット型携帯端末の活用群(10 名)と非活用群(10 名)の 2 群に分類し、ランダム化比較試験を行う。活用群は、タブレット携帯型端末を用いた e-糖尿病手 帳を 1 年間活用し、①血糖値、②食事・補食内容、③インスリンの投与量と種類、④活動量、⑤その日の振り返りや評価コメントなどを入力し、研究者からの支援を受ける。(3)介入方法:研究者は、小児糖尿病患者から送信されたデータやコメントに対して、フィードバックを送信し、患者の自己管理行動に対して動機づけが高まる教育支援を行う。研究者数名による統一した介入が行えるよう、介入マニュアルを作成して支援を行う。(4)介入効果の測定:血糖コントロール(HbA1c 値)、糖尿病自己効力感尺度、糖尿病セルフケア行動尺度、小児 QOL尺度を用いたアンケート調査を、システム導入前、導入3か月後、6 か月後、1 年後に実施する。(5)システムに関する評価:ICT 活用後に、糖尿病自己管理学習支援ツールの有用性と教育効果について、アンケートを用いて評価する。
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