2020 Fiscal Year Research-status Report
介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標の開発
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16K12194
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渕田 英津子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90315846)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 生活機能 / 多職種協同 / ケア指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標」を作成することである。2020年度は,研究1:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標に必要な要素・項目の検討,研究2:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の使用可能性の検討,研究3:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の内容妥当性の検討を行った。 研究1は,940の全国の介護施設に所属する看護職・介護職(以下,ケア職員)各2820名に質問紙調査を行った。結果,国内外の文献検討から抽出した154の要素・項目は,介護施設では非現実的であり,かつガイドラインやマニュアルで必要性が確認できない2要素を削除,自由記述に記載があり必要と判断した“加齢に伴う皮膚状態の変化”,“私物の管理”,“専門職としての認識の深化”の3要素を追加した155の要素・項目が必要であると示された。 研究2は,介護施設のケア職員8名に個別インタビューを行った。結果,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)」の236要素・事象・項目は,“表現が不明確”,“評価が介護施設では困難”などの理由から92の要素・事象・項目を修正,43の要素・事象を削除することで使用可能になると示された。 研究3は,認知症ケアの専門家8名に個別インタビューを行った。結果,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)」の236要素・事象・項目は,98の要素・事象が妥当であると判断された。また,“表現が不明確”な98の要素・事象・項目を修正, “定義が曖昧”,“介護施設では非現実的”などの40要素・事象を削除,“骨折”,“尿路感染症”の2事象を追加することで内容妥当性が高まると示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標」を作成するために,2020年度は,研究1:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標に必要な要素・項目の検討,研究2:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の使用可能性の検討,研究3:介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の内容妥当性の検討を行った。 2020年度は,COVID-19の感染が拡大し,研究1は,介護施設のケア職員への質問紙調査の実施時期を慎重に検討する必要性が生じ,質問紙の発送時期を決定するのに時間を要した。また,研究2と3は,介護施設のケア職員及び認知症ケアの専門家を研究対象としており,COVID-19の感染を考慮したインタビュー方法と実施時期の検討が必要となった。そのため,COVID-19の感染状況やインタビュー対象者の地域を考慮したインタビュー時期の調整,感染対策を講じたインタビュー実施方法の検討,Web会議システムを用いたインタビューの準備,倫理申請書類の修正が必要となった。そのため,研究1~3の準備と実施に時間を要した。加えて,COVID-19の影響を受けて,研究1~3の実施時期が遅れたことから,研究1~3の分析も予定していた時期より遅れた実情がある。さらに,本学の老年看護学分野は2名で学部の実習,1名で学部と大学院の講義・演習を実施している。そのため,研究に使用できる時間の確保が困難な状況が継続している。これらの理由により,研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1では,全国の介護施設のケア職員を対象に,国内外の文献検討により作成した「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標」に必要な要素・項目の検討を行い,2要素を削除,3要素を追加する必要性が示された。研究2では,介護施設のケア職員を対象に,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)」の使用可能性の検討を行い,101要素・事象・項目が使用可能,92要素・事象・項目が修正により使用可能であり,43要素・事象を削除する必要性が示された。研究3では,認知症ケアの専門家を対象に,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)」の内容妥当性の検討を行い,98の要素・事象・項目は妥当,98の要素・事象・項目は修正により妥当,40要素・事象を削除,2事象を追加する必要性が示された。 2021年度は,研究1~3の分析結果を統合し,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)」の要素・事象・項目を精選する。また,介護施設のケア職員が使用できるよう使用方法を記載した手順書を加えた「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」の作成を行う。その後,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」を介護施設の認知症高齢者に試用し,主担当として試用したケア職員に,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」の要素・事象・項目の必要性,試用して良かった点・困った点について個別インタビューを行う。最後に,試用過程で明らかとなった課題とインタビューの分析結果を統合し,介護施設のケア職員が使用可能な「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標」を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響と本学の老年看護の体制により,研究進捗に遅れが生じ,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」の試用と試用後のケア職員へのインタビューを行うことができなかった。2021年度は,研究1~3の結果から「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」を作成し,作成した「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」を介護施設の認知症高齢者に試用する予定である。また,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」を主担当として試用したケア職員に個別インタビューを行う予定である。そのため,「介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.2)」を作成する印刷費とインタビューの対象となるケア職員への謝金が必要となる。また,研究1の介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標に必要な要素・項目の検討,研究2の介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の使用可能性の検討,研究3の介護施設の認知症高齢者の生活機能を支える多職種協同ケア指標(Ver.1)の内容妥当性の検討の結果を学会にて発表予定である。そのため,学会への参加費が必要となる。
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