2016 Fiscal Year Research-status Report
精神障害当事者の「病いの語り」を促進する看護援助に関する研究
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16K12289
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
森 真喜子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 教授(移行) (80386789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安保 寛明 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00347189)
江波戸 和子 杏林大学, 保健学部, 准教授 (60318152)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 病いの語り / 精神障害当事者 / リカバリー / 当事者研究 / ナラティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる今年度は、研究テーマである「病いの語り」やそれに深い関連のある「当事者研究」や「オープンダイアローグ」の定義や方法に関する資料を収集し、その内容を分析するとともに、精神障害当事者が病いの体験を語る場や機会を提供する活動の実践例に関する資料収集と併せて国内の複数の地域における関連事業に関するフィールドワークと予備的なヒアリング調査を実施した。さらに、リカバリーやナラティヴ・アプローチに関する文献検討も併せて実施した。 また、精神障害当事者が自らの病いの体験について語る場や機会を企画・運営する団体や施設を訪問し、担当者に本研究の主旨や目的、および倫理的配慮等について了解を得るとともに、今後の調査の進め方に関する相談を実施し、協力の了解を得た。その後、前出の担当者より研究者が紹介を受けた、病いの体験について語る機会をもつ予定のある精神障害者当事者とその援助者(医療福祉専門職)と面談し、研究者が文書と口頭で本研究の主旨を説明し、同意が得られた者を研究参加者とした。 なお、質的データ分析の精度を高めるため、グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析手法を研究者間で共有する機会を設定した。 今後は、調査への協力について同意が得られた研究参加者に、当事者と援助者それぞれに、あるいは両者の間で生じている現象に関する2種類の聞き取り調査(A.当事者が「病いの語り」を援助者と協力しながら形成していく過程でのやり取りを音声で記録する調査、B.「病いの語り」の準備を始めた時期から語りを公表した後までの体験を聞き取るインタビュー)を随時実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究参加者(調査対象者)には精神障害当事者が含まれることから、精神障害当事者が自らの病いの体験について語る場や機会を企画・運営する団体や施設の担当者と特に配慮すべき点について、ケース別の綿密な打ち合わせを実施すると同時に、調査実施前後の研究参加者の病状の変化に対応するための医療支援体制の整備について協力を求めることを重視した。 また、研究者が研究参加者となった精神障害当事者と初対面という条件において聞き取り調査を実施するのではなく、事前に複数回の面会の機会を設けることにより、研究者と研究参加者との信頼関係の構築に努め、研究参加者のより深く率直な語りを引き出すことを目指すための準備期間を要した。 そのため、調査開始前の準備に十分な時間をかける必要があったが、来年度以降は順次効率的に調査を実施するための準備を今年度中に整えることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.データ収集 精神障害当事者の「病いの語り」を企画・運営する複数の施設の担当者の協力を得て、精神障害を有し、「病いの語り」を予定している精神障害当事者とその援助者のペアを全体で20組程度選定し、調査を実施する。協力の承諾を得られた研究参加者に、当事者と援助者それぞれ、あるいは両者の間で生じている現象に関する聞き取り調査(A.当事者が「病いの語り」を援助者と協力しながら形成していく過程でのやり取りを音声で記録する調査、B.「病いの語り」の準備を始めた時期から語りを公表した後までの体験を聞き取るインタビュー)を実施する。前者の「A.当事者が「病いの語り」を援助者と協力しながら形成していく過程でのやり取りを音声で記録する調査」では、研究者が介在することによる影響を最小限にするため、研究者が事前に渡しておいたICレコーダーを用いて援助者が「病いの語り」を形成する過程でのやり取りを毎回録音する。後者の「B.「病いの語り」の準備を始めた時期から語りを公表した後までの体験を聞き取るインタビュー」では、インタビューガイドをもとに、1回40~60分程度、精神障害当事者側が「病いの語り」の前後で受けた・受けていると感じる援助の内容と同時に、援助者側が提供した・提供していると考える援助の内容を聞き取り、承諾を得た上で録音する。なお、上記の調査に先立ち、当事者を担当する援助者からの当事者に関する基本情報を収集する。基本情報の内容は、年齢、性別、精神障害発症の時期、社会資源の利用状況等である。 2.データ分析 上記の2種類の調査において得られた音声データをもとに逐語録を作成し、精神障害当事者による「病いの語り」が形成されるプロセスをストラウス・コービン版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析する。随時、研究分担者によるスーパービジョンを受け、分析の信用性、移転性、信憑性、確証性を確保する。
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Causes of Carryover |
データ収集のための調査は予定通りの時期に開始されたものの、予定していた症例数にはまだ到達していないために、調査の経費として予算化している旅費・謝礼・印刷費等の支出が一部に限られていることが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降は、上記の理由の欄にも記載した通り、データ収集のための調査を継続的に実施する予定であり、その必要経費として、旅費・謝礼・印刷費等の支出を予定している。また、本研究課題に関連する研究成果の発表のための国内外で開催される学術集会参加に伴う旅費や参加費の支出を予定している。
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Research Products
(7 results)