2018 Fiscal Year Research-status Report
大学生へのデートDV予防を目的とした系統的な教育プログラムの開発
Project/Area Number |
16K12333
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
長谷川 美香 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (90266669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米澤 洋美 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (10415474)
北出 順子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (80509282)
川口 めぐみ 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (40554556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デートDV / 大学生 / 予防 / 教育 / プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、将来の深刻なDVにつながる可能性の高い、親密な関係にある若者間の暴力(以下、デートDVとする)を予防するため、デートDV被害のハイリスクグループである大学生へのデートDV予防教育プログラムを開発することである。本研究は、1.デートDVへの態度を測定する日本語版尺度の開発、2.大学生を対象とするデートDV予防教育プログラム改良版の作成、3.改良版予防教育プログラムの実施とその有用性の検証から構成されている。 これまでに、『Justification of Verbal/Coercive Tactics Scale(JVCT)』と『Attitudes About Aggression in Dating Situations(AADS)』の日本語版尺度を作成し、妥当性を検証した。作成した日本語版尺度の逆翻訳と尺度原版との概念同一性を確保するため、日本語への翻訳に携わっておらず、英語の尺度原版を見ていない医学系論文翻訳業者2名が、日本語版尺度(案)の英語への逆翻訳を行った。逆翻訳の内容は、研究代表者、分担者とが確認、修正し、尺度原版との概念同一性を確保した。その後、再度、その仮尺度を、英語の尺度原版を見ておらず、かつ、これまでの翻訳に携わっていない医学系論文翻訳者1名が、英語への翻訳を行い、最終的な尺度原版との概念同一性を確保した。また、本尺度の妥当性、整合性を検証するため、仮尺度を調査項目に含む質問紙を作成し、X大学医学部学生344人を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。改良版デートDV予防教育プログラムは、デートDVに関する「知識」、「態度」の向上、親密な関係にある恋人からのデートDV「被害経験」を減少させることを目的としている。教育内容は、DV、行動変容、認知等に関連する理論を参考に、教育方法を考慮、精選し、改良版予防教育プログラム(案)を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デートDVに関する「知識」「態度」「行動」の向上を目的とした暴力予防教育プログラムを作成する上で、行動変容に関する諸理論は基礎となるものである。これらの理論を踏まえ、暴力に関する正しい「知識」を獲得し、暴力に関する「態度」の向上、「行動」の改善を促すため、デートDV予防教育内容、方法の検討が必要である。そこで、行動変容に関する諸理論、DVに関連する理論、およびDVに関する先行研究結果の暴力予防教育プログラムへの活用について検討を行った。 (1)行動変容理論の活用:行動変容理論については、保健行動に関する代表的な理論である「健康信念モデル」、「自己効力理論」、「変化のステージモデル」、「計画的行動理論」、「ソーシャルサポート理論」、「コントロール所在」に着目し、それぞれの理論の特徴、理論を踏まえたうえでの行動変容を促すための教育内容、教育手法の精選を検討した。 (2)DVに関連する理論の活用:デートDV予防教育プログラムを作成する上で、DVに関する理論は教育内容の重要な柱となるものである。そこで、DVを理解する際に頻繁に用いられる理論である「暴力のサイクル理論」、「学習性無力感理論」、「パワーとコントロール(権力と支配)」モデルを用い、デートDVを理解する上での核となる教育内容の精選を行った。 (3)DVに関する先行研究:DVに関する先行研究では、暴力に関する基礎知識となる「DVの実態」、「配偶者(パートナー)からの暴力が与える影響」、「恋人間暴力への対処法」を中心に文献レビューを行い、プログラム内容の精選を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
『Justification of Verbal/Coercive Tactics Scale(JVCT)』と『Attitudes About Aggression in Dating Situations(AADS)』の日本語版仮尺度を用い、大学生を対象にデートDV予防教育プログラムを実施し、その結果を評価する。 現在、独自に作成したパートナー間暴力予防教育プログラム内容、方法について、日頃から配偶者からの暴力被害を受けた女性の相談に携わっているA県内の配偶者暴力相談支援センターの女性相談員5名から、デートDV予防教育プログラム(案)の内容および実施方法について助言を得ることを計画中である。助言を得た上で、教育プログラムを完成させる。 大学生を対象としたデートDV予防教育プログラムを評価するため、教育プログラムを実施する介入群と実施しない対照群を選定し、対象者への協力依頼を行う。本研究への参加に同意が得られた者を対象に、デートDV予防教育プログラムを実施・非実施し、実施群と対照群との2群間で、デートDVに関する「知識」「態度」「行動」の変化を定期的に測定する。測定結果を基に、変化が見られた項目、見られなかった項目を解析し、デートDV予防教育プログラムの内容、方法、媒体等と照合し、教育プログラムを改良する。
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Causes of Carryover |
【理由】:大学生を対象としたデートDV予防教育プログラムの目的である「知識」「態度」「被害経験」を変化させる教育内容について、DVに関する諸理論を参考に、教育内容、教育方法を考慮、精選し、改良版予防教育プログラムを完成させた。その際、国内外の先行研究、文献に関するレビューが不可欠なため、資料購入費に支出予定であったが、電子ジャーナルでの閲覧、他の研究者からの無償提供・借入で対応できたため、資料購入費の支出が当初予定額より大幅に減少したことが理由であった。 【使用計画】:今年度は、作成したデートDV予防教育プログラムの結果を評価する予定である。最終的な研究対象者の「知識」、「態度」、「行動」については自記式質問紙調査を行うが、教育プログラム中に媒体としてクリッカーを用い、質問紙調査には含まれていないデートDVに関するエピソード等について、参加型教育を実施する。そのため、クリッカー購入費に支出予定である。
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