2017 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的検査による生活習慣病リスク判定が被験者の予防行動に与える影響
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16K12335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西垣 昌和 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20466741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 晃洋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70262706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム / リテラシー / 健康行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,ゲノムリテラシーがリスク判定と認識・行動との介在因子となっているかを測定する尺度を開発することを目的に,遺伝,ゲノムに関するリテラシーについて調査に関する系統的レビューを実施した. 過去20年間の一般市民,高校生,大学生を対象に遺伝/ゲノムに関するリテラシーを調査もしくは測定した文献を検討した. Pubmed, Web of science, Scopus, 医中誌の4データベースを用いて,genom* literacy, genetic literacy, health literacy等のキーワードにて文献を検索した.その結果,441編の文献レコードが抽出され,抄録から言語条件(英語または日本語),,対象者条件(医学生や医療関係者・医療専門職を対象とした研究は除外),および研究目的によりスクリーニングした後,148編の原著論文本文をレビューした.これらの文献のうち,21編が本研究の目的に合致する内容であった. 遺伝/ゲノムリテラシーを対象とする研究は,一般集団を対象としたものと,特定疾患のハイリスク集団(乳がん等)を対象としたものに大別された.前者では,遺伝学に関する用語や現象に関する知識について調査している研究が多く,後者は遺伝学の継承性や具体的な疾患リスクにまで言及した研究が多かった.これらの文献から,先行する研究における遺伝/ゲノムリテラシーは,1.遺伝学的な用語・現象の理解,2.遺伝学的知識の利用,3.遺伝を身近な出来事として認識できているか,の三要素が基本的な枠組みを形成していると考えられた.これらの枠組みの中で,具体的にどのような項目が測定されているかは,各研究によって異なっていたため,それらを集約するとともに,昨今のゲノム医療の進展を反映させた尺度案を作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝/ゲノムリテラシー尺度の作成を目的とした文献レビューに時間を要し,実際の尺度作成およびその評価を目的とした調査にまで至らなかった.本研究で実施予定のリスク判定仮想シナリオによる行動変容に関する研究結果も海外から報告されてきている.それらの研究において,リスク判定を受けた対象の行動変容の実態について記述されており,本研究テーマの一部については既知となった.そのため,本研究ではそれらの先行研究では明らかにできていない,リスク判定が行動に与える影響に,ゲノムリテラシーを含む様々な因子が関連するか否かを検討する方針とした. また,本研究開始と時を同じくして,ゲノムリテラシーに関する研究が欧米において活発に実施されている.それらの研究から見いだされた,現時点での最新の知見を尺度作成のプロセスに取り込むこととした.その結果,ゲノム医療の現状を反映した尺度案が作成できたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムリテラシー測定尺度の計量心理学的評価については,リスク判定仮想シナリオによる行動変容調査と並行して実施することで,研究工程の短縮をはかる.また,当初は広告による対象者リクルートを予定していたが,インターネット調査パネルを利用することで,迅速な対象者リクルートおよび調査実施を目指す. 上記調査で得られた結果を踏まえ,遺伝的リスク判定が対象の行動に及ぼす効果と,それらの関連にゲノムリテラシーが与える影響について30年度前半に調査する,それに基づいて遺伝的リスク判定の公衆衛生上の問題点を明らかにするとともに,一般市民が遺伝的リスク判定について考えるうえで備えておくべきゲノムリテラシーを向上させるための方策について30年度後半に検討・公表する.
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Causes of Carryover |
平成29年度に実施予定であった調査を平成30年度に持ち越したため,次年度使用額が生じた.調査は平成30年度に実施し,請求した費用は使用予定である.
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