2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的検査による生活習慣病リスク判定が被験者の予防行動に与える影響
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16K12335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西垣 昌和 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (20466741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 晃洋 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70262706)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム / リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム解析技術の,予想をはるかに上回るはやさでの進歩は,ゲノム医療における技術先行・社会実装基盤の遅れを招いている.そのため,ゲノムの情報の不適切な取扱いは,ゲノム情報の保有者たる個人に様々な不利益を招きうる.社会実装基盤には様々な要素があるが,ゲノム医療の受け手である一般集団が,最低限の遺伝に関する正確な知識と正しく活用できる能力,すなわちゲノムリテラシーを有することは極めて重要な社会実装基盤である.本研究では,ゲノムリテラシーを有することが,ゲノム情報に基づいたリスク判定に対し適切な行動とるための必須要素であると仮定している.そのために,「ゲノムリテラシー」を明確に定義し,さらにそれを測定するツールを作成・検証した. 昨年度より,継続している過去去20年間に遺伝/ゲノムリテラシーを測定,評価した文献36報のシステマティックレビューにより,質問項目183を収集し,キーワード16語を抽出した.また,一昨年度に定義したゲノムリテラシーの段階的定義と合わせ,ゲノムリテラシー測定尺度の概念構造の設計を行う.また,設計した概念構造に対し,収集した質問項目を参考にしつつ項目の設定を行う. システマティックレビューにより得られた質問項目数は183項目であった.また最終的に抽出されたキーワードは16語,そのうち,「遺伝子」「ゲノム」「ゲノム医療」「遺伝学的検査」「単一遺伝子疾患」「多因子疾患」「遺伝子検査ビジネス」「究極の個人情報」の8語をメインキーワードとして設定しゲノムリテラシーの各セクションを評価する質問項目を設定した.それぞれのメインキーワードに関する質問項目を,「遺伝学的用語の認識」「自分自身のこととして検討する態度」「遺伝学的な用語や現象の理解」「遺伝学的知識の使用」の段階に沿って設定し,表面妥当性を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノム医療に関する社会情勢の変化は激しく,がんゲノム医療の実施基盤が2018年度に急速に整備されたことは象徴的なことである.これまで,ゲノムリテラシーは,ゲノムについて知識をもち,それに対して適切な態度をとる,という段階までを主眼に設定していた.しかし,急速にゲノム医療が普及したことで,知識,態度,だけでなく,その情報を実際に活用する行動のレベルでのリテラシーがさらに重要になった.そのため,システマティックレビューの文献を追加し,行動レベルまでを含んだリテラシーを定義することとしたため,遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度をもって,知識,態度,行動を要素とした尺度の項目は設定できた.本尺度を用いて一般集団のリテラシーを測定し,リテラシーと実際の健康行動との関連を検討することが次の段階である.そのため,事業年度を1年延長し,次年度にリテラシー測定,行動との関連の検討する.さらに,その結果にもとづいてゲノム情報に基づく行動変容に対する医療者の介入指針をエキスパートパネルによって作成する.
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Causes of Carryover |
2018年度は,ゲノムリテラシー測定ツール作成に関するシステマティックレビュー,およびエキスパートオピニオンの収集と学会発表を実施した.次年度使用額は,一般集団対象調査(webによる前向き調査)の実施に使用する.
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