2016 Fiscal Year Research-status Report
自治体のたばこ対策の推進に関する保健師のコンピテンシー評価尺度の開発
Project/Area Number |
16K12352
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
道林 千賀子 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (20733801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 正和 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所), ヘルスプロモーション研究センター, センター長 (00450924)
表 志津子 金沢大学, 保健学系, 教授 (10320904)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自治体 / たばこ対策 / 保健師 / コンピテンシー / 尺度開発 / 人財育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自治体のたばこ対策の推進に関する保健師のコンピテンシーの構成を解明し、尺度試案、尺度案の作成を経て、信頼性・妥当性の検証を行い、一般化できるコンピテンシー評価尺度を開発することを目的としている。 初年度(28年度)は、第1段階として、自治体のたばこ対策の推進に関する保健師のコンピテンシーの構成の解明を目的に、国内外の先行研究をレビューしたうえで、たばこ対策の専門家(3名)の推薦に基づき、全国各地の先進自治体でたばこ対策を担当している保健師等への個別インタビュー(行動結果面接法Behavioral Event Interview;BEIを参考にインタビューガイドに基づいた半構成的面接)と参加観察(取り組みに関する計画書や報告書等の文書資料、啓発用媒体等の入手・撮影)を行った。この第1段階でコンピテンシーの全容を明らかにすることは、次の段階の尺度試案作成のベースとなるため重要である。先進自治体の選定基準は、「たばこ規制・対策の自己点検票-市町村版」の5領域において望ましいレベルの対策を体系的に推進し、目標値の設定と効果評価を実施し、対策の成果が顕著である(あるいは先進的な取り組みを積極的行っている)こととした。 結果、11自治体の保健師12名、事務職2名、歯科衛生士2名、栄養士1名の合計17名からデータを収集した。一方、3自治体からは、業務多忙等を理由にデータ収集はできなかった。 現在は、得られたデータに基づき、卓越した保健師等が示す特徴を識別し、具体的な行動言語で定義し、質的記述的に分析を行っている。分析の際は、研究者間協議を重ね、たばこ対策と公衆衛生看護および質的研究に詳しい研究分担者と連携研究者からスーパーバイズを受けながら進めている。 なお本研究は、岐阜医療科学大学ならびに金沢大学の倫理審査・承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である28年度の当初の計画では、個別インタビューと参加観察のデータに基づいて尺度試案の作成までを行う予定であったが、実際にはデータ収集を概ね完了したものの、その質的分析の段階にとどまっている。 この理由として、第1に、関係する2機関の倫理審査の手順を踏んだことにより審査結果が出るまでに時間がかかり、データ収集に着手するのが遅れた。第2に、幅広くデータを収集するため、研究対象者を全国各地から選定したことに加え、研究対象者数が予定より多くなったことから、調査日程の調整を含めデータ収集にかかる期間が予定より延長した。第3に、研究対象者の増加に伴い収集したデータ量も相対的に増加したことから、分析に時間を要している点があげられる。 尺度開発までの研究プロセスの全体を踏まえた上で、初年度(28年度)の計画に含めた自治体のたばこ対策の推進に関する保健師のコンピテンシーの構成を質的記述的に解明することは、最終的に開発する評価尺度のもととなる尺度試案を作成するための重要な研究段階である。よって、この質的分析は時間をかけて丁寧に行う必要があり、現時点での研究計画からの遅れはやむを得ず、現在の進捗状況に応じて今後の研究計画を変更していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、現在の研究の進行状況にやや遅れが生じているため、研究全体の計画を以下のように若干変更する。 29年度は、現在進めている質的データの分析を継続し、29年度の前半を目途にコンピテンシーの全容を解明する。分析の際は、研究参加者によるチェックや濃密な記述により厳密性を確保する。その後、29年度後半から尺度試案の作成に着手する。次に、第2段階としてたばこ対策に関する専門家によるレビュー、パイロット調査により内容的妥当性の検討を行い、尺度試案を修正し、尺度案を作成する。たばこ対策に関する専門家によるレビューは、自治体のたばこ対策の関する各分野の専門家(5~6名)を対象に、質問項目の重要性、内容の妥当性、表現や項目数の適切性、現場での活用可能性等について質問紙調査(自由記述を含む)を行う。パイロット調査は、最終段階の本調査に向けて、母集団に類似の対象を便宜的に抽出(都道府県レベル)してパイロット調査を行う。なお、研究の進行状況によっては、パイロット調査は30年度に実施することとする。 30年度は、29年度の研究の進行状況に応じて、第3段階として尺度案を用いた全国調査(本調査)を行い信頼性・妥当性を検証し、自治体のたばこ対策の推進に関する保健師のコンピテンシー評価尺度を完成させ、一般化をめざす。30年度の研究の進行状況によっては、本研究の期間延長の申請も検討する。 なお、29年度と30年度の量的研究の実施にあたり、再度所属大学の倫理審査・承認を得て進める。 今後の研究プロセスにおいて、自治体のたばこ対策の推進に関するコンピテンシーについて、担当者の職種や所属、たばこ対策の領域による類似点や相違点について比較しながら検討を進め、最終的に自治体のたばこ対策担当者の約8割を占める保健師のコンピテンシーの特徴を捉え、実践現場での活用可能性の高い評価尺度の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として71,722円の当該助成金が生じた状況としては、28年度末までデータの収集期間が延長したことにより、データ分析に関する作業も29年度以降に継続することとなり、これに伴う費用が未消化となったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として計上する助成金は、29年度も継続するデータ分析に関する費用として活用し、翌年度分として請求した助成金については、一部修正した研究計画の29年度の研究実施(たばこ対策の専門家に対する質問紙調査とパイロット調査)に伴う費用として活用する。
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