2016 Fiscal Year Research-status Report
特定保健指導のためのヘルスリテラシー尺度の開発と評価
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16K12359
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Research Institution | Hiroshima Cosmopolitan University |
Principal Investigator |
岡平 珠才子 広島都市学園大学, 健康科学部, 教授(移行) (60441557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梯 正之 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80177344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘルスリテラシー / 尺度開発 / 特定健診 / 特定保健指導 / 社会・経済的要因 / 保健指導評価 / アウトカム評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は健康情報に基づいた適切な意思決定と行動を支援するツールとして「特定保健指導用のヘルスリテラシー測定尺度」を開発することである。さらに保健指導対象者の社会経済状況についても明らかにし、情報の入手・理解・評価・活用といった社会的スキルが社会経済的要因に左右されていないかについても明らかにする。4~9月:①広島県国保連合会および広島県下の市町に調査研究の依頼と打診を行った。その後②調査を依頼する自治体の特定健診・特定保健指導事業計画から調査の実施計画を立てた。次に③調査票作成のための調査内容を先行研究から考案し調査票案を作成した。④その調査票案を共同研究者・連携研究者(3名)予備調査を行うK市及びA町の行政保健師(10名)に表面妥当性(所要時間・答え易さ・理解のしやすさ・負担感)についての検討を依頼した。10月~3月:⑤修正後の調査票の質問項目を確定するために県下の2市町で予備調査を行った。K市の調査方法は、特定健診後に保健指導の対象になった要指導者に宛てた保健指導勧奨文書(自治体発行)に予備調査の協力依頼文書と調査票を同封し自治体より発送した。指導の利用の有無を回答する返信用封筒に調査票の回収も依頼した。A町の保健指導方法は保健指導対象者全員に訪問で行う。その際に調査票を手渡し、回収は町役場に郵送による返送を依頼した。K市・A町の2市町で69件の調査結果が得られた。⑥調査票には健診結果と問診票の情報開示についての同意も尋ね、同意署名のあった対象者の健診結果・問診票のデータは自治体担当課から提供を受けた。(調査期間:H.28.12~H.29.3)⑦解析:69件で「属性・社会経済状況(学歴・職歴・世帯年収・予想外の出費・経済的ゆとり)・主観的健康感」の自治体別のクロス集計を、また上記データ間の相関分析を行った。また欠損値のある3例を除く66例で探索的因子分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査内容・調査マニュアルを示し協力の得られた2自治体で、ヘルスリテラシー(H.L)測定のための調査票案を用いて予備調査を実施・完了した。69件の調査結果の基本集計(記述統計・クロス集計)を行い、K市(38件)とA町(31件)の比較分析(クロス集計)を行った。今後の本調査の事前傾向を得る為と、協力自治体への結果の開示の目的で行った。属性・教育年数・職業・世帯年収・予想外の出費・経済的余裕・主観的健康感についての2自治体の比較分析では、いずれも男女比は6:4で男性が多く年齢も半数以上が65~69才であった。世帯状況は42~45%が夫婦1人暮らし、26から34%が2世帯同居、18~19%が独居、次の3世帯同居で2市町の都市部3%・山間部13%の特徴が見えた。教育年数は6-9年が17.4%、10-12年が44.9%、13年以上が37.7%で市町の相違はなかった。職業の割合で最も多かったのは市が事務職26.3%、町が自営業25.8%であった。世帯年収についてはいずれも200万-400万円未満が42.1~45.2%と最も多く200万円未満は市39.5%が、600万円以上は町9.7%が多かった。予想外の出費を聞く設問では「少しとかなり」を合わせると「心配」がいずれも71%を占めた。経済的ゆとりについては「多少ならある」が市は34%、町は68%、「あまりない・まったくない」を合わせると市は61%、町は32%であった。最後に尋ねた主観的健康感(1問)が「普通」とした割合は52~55%を占めるが「余り・よくない」を足した割合は市が21%、町は6%である。この結果で相関分析も行っている。次にH.L質問項目の調査結果を用いて探索的因子分析を行い、4つの共通因子を得た。それぞれの抽出された変数を用いて求めたCronbachのα係数はいずれも0.8以上で充分な内的整合性があるものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な確定は仮説尺度としている情報の「入手・理解・評価・活用」の潜在因子(共通因子)をモデルにデータが合致するかを確認的(検証的)因子分析で確かめて行く。項目の修正と入れ替え後、H.29年度初めに確認的因子分析を行い適合度指標を求める。確定作業を終え、確定した項目を用いて本調査を実施する。 本調査は、県内23の自治体に予備調査結果を提示し、各自治体にとって特定保健指導対象者の属性・社会経済状況などの傾向がわかる利点を説明し、調査依頼をしていく。データの蓄積を図り、尺度開発に適正な件数(項目の5~10倍=20×5~10=100~200)が得られた段階で調査を終了し(10~12月予定)、尺度の妥当性・信頼性を確かめる因子分析を実施する。その後H.L尺度の客観的評価ツールとしての基準化・標準化を行い評価指標になり得る基準値を求める。 また、①属性・社会経済状況・主観的健康感とH.L調査結果、②H.L調査結果と実際の問診データ(生活習慣)や健診データ(メタボ指標)との相関、③H.L尺度を用いたH.L測定結果の保健指導への活用(初回面接時のH.L測定と半年後・1年後のH.L測定・保健指導効果の検証など)さらに再調査等によりH.L尺度の精度を高めつつ、活用と検証を行っていく。
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Causes of Carryover |
1.データの入力・集計作業を業者に委託したが、作業が年度にまたがっていたため委託料が次年度に生じた。 2.調査票の郵送作業の為のアルバイト料・通信運搬費を挙げていたが、予備調査に協力した自治体では担当課からの郵送物に調査票を同封、回収は市の返信用封筒で行われ、(調査票の配布100~150件/月×4カ月=約500件)郵送料は重量の差額のみの支出で済んだ。また家庭訪問による手渡しによる配布等で人件費や郵送料が当初の見込みより大幅に省けた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.当該年度の予備調査は2市町であったが、次年度は県下の23自治体に調査依頼を行うため郵送料・人件費が発生する見込みである。2.データ入力・集計作業の業者委託もそれに伴い増加する見込みである。(データ収集見込み:200件の有効回答を得るため回収率を30%として600~700件の調査票の配布が必要)3.研究成果の公表に関する経費(学会発表・論文の投稿等、協力自治体への報告準備) 以上の支出を考えている。
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