2017 Fiscal Year Research-status Report
津波被災紙資料の再現実験による文化遺産救済処置の実践的検証
Project/Area Number |
16K12380
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
大山 龍顕 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 講師 (50710357)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 津波被災作品 / 文化財保存 / 保存修復 / 水損資料 / 日本画 / 書画作品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年度の研究計画としては研究テーマとして掲げたA:救済初動時の乾燥処置B:水損が本紙に与える影響、C:書画作品の保管状況の改善がある。以下に、テーマごとに沿ってみる。A:先行研究の文献調査を継続し整理を進めた。また、水損資料の資料の保管方法と展開方法を検証する上で、屏風作品を失礼とした修復を行った。B:カビに対する処置については継続して再現サンプルを作成し除去方法を検討する。A同様にカビに対する処置の検討を進めているが、実験と結果については最終年度に集約を図る。併せてこれまでの文化財修理における洗浄処置について追跡して文献調査を行う。C:宮城県石巻市大原浜地区「切り絵曼荼羅」を対象に使用顔料の蛍光X線分析調査を実施した。画面中の90箇所の顔料について分析を行い、デジタルマイクロスコープを用いて繊維分析文字視した。地域における作品の背景についても調査を進め、保存環境と改善策を検討する上で作品の周知と価値の底上げが重要となるため、当該学会において作品について発表を行う準備を進めた→日本民俗学会第70回年回。 これまでの津波被災作品への取り組みについて調査研究成果については東アジア文化遺産保存学会2017上海国際文化遺産シンポジウムにおいて報告した(口頭発表1件、ポスター発表1件)。また、当センターにおいて保管していた津波被災作品である石巻文化センターの日本画作品について修復処置を実施して作品の返還に繋がったことで、本研究においても掲げている三つのテーマに貴重な実例を得ることに繋がっている。本修復事例とその成果については第40回文化財保存修復学会(口頭発表)にて発表を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では津波被災からの救済処置と対応策を検討することから今後の文化財防災に資することを目的としており、三つのテーマを設定して研究に取り組むこととしている。A:救済初動時の乾燥処置B:水損が本紙に与える影響、C:書画作品の保管状況の改善である。 それぞれのテーマにおける進捗では同センターにおいて保管していた石巻文化センターの日本画作品について修復処置を実施したことで、実践的な検証と成果を得ることに繋がっている。 これらの成果は本研究を推進する上でも大変意義のあるものとなっているが、一方で、当初予定していたサンプル作成と劣化試験による検証はやや遅れている傾向がある。とはいえ、この進捗状況は最終年度にかけて修正可能な範囲となっており、そのため、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進については本年度の研究計画にある内容に沿って進める予定である。但し、現在の進捗状況についても述べたとおり、劣化と強度試験については優先して進め、成果の集約を図る。また、最終的な研究成果を周知する方法として、関連学会における発表や紀要への投稿、報告書、小冊子などの作成も視野に入れながら最終的な研究成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
2年度目に予定していたサンプル作成および、劣化実験において使用予定の支出分と調査費用の一部が残金として残った。しかし、これについては最終年度に実施することとなっている。
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