2017 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災がメンタルヘルスに及ぼす長期的影響とその臨床心理学的支援に関する研究
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16K12388
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
奇 恵英 福岡女学院大学, 人間関係学部, 教授 (40412689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 博之 福岡女学院大学, 大学院人文科学研究科, 教授 (00037037) [Withdrawn]
服巻 豊 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60372801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 災害後長期ストレス / PTSD / うつ状態 / 心理的支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東日本大震災による被災者に対して調査を行い、大震災が精神健康に与える影響を検証するとともに、臨床心理学的災害支援手法として主動型リラクセイション療法(SART;Self-Active Relaxation)の効用を検証するためのものである。長期支援を行いながら研究調査を行った実績から、避難所から仮設住宅、それから復興住宅集合地へと住居環境が変わる中で、長期に渡る心身の変化をインタビュー調査を交えて、量質ともに意味あるデータを収集することができた。 本年度はまず、PTSDとうつ状態が指標となっている『SQD(Screening Questionnaire for Disaster Mental Health)』の中間分析を行い、淡路阪神大震災時のSQD調査との比較を行った結果、同様の結果がみられ、震災後の長期ストレスが認められた。調査対象の性別、年齢、住居形態、同居の有無、震災前後の持病の有無、震災後持病の有無、被災の主観的程度、現在の生活の受容状態を要因にSQDを分析した結果、男性が女性よりPTSD得点が高く、被災のある群がない群より両指標とも得点が高かった。PTSDもうつ状態も、平成27年8月の初回調査よりその得点が半減しているが、PTSDハイリスクが27.27%、うつ状態ハイリスクが20.13%と以前と高いことが確かめられた。 リスクが高い重要な要因としては、被災者の被災の程度に対する主観的評価で、物理的被災の程度より、被災体験を心理的に克服することが重要な支援の視点であることが示唆された。 さらに、調査とともに行っている震災支援の手法である主動型リラクセイション療法(SART;Self-Active Relaxation)を中心に、震災支援における活用の可能性を含め、Frontiers in Human neuroscienceに英語論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2017年8月24日~2017年8月29日及び2018年3月18日~2018年3月25日の2回に渡って、岩手県宮古市において調査研究を行った。さらに、本研究課題を進めるにあたって必要なデータを早期に確保し、研究の充実を図るために、2017年11月から12月の2か月に渡って、本研究調査の協力団体である宮古市社会福祉協議会の協力を得て、別途質問紙調査を行い、現地調査は2018年度夏季の1回の追加で済むように研究のまとめの準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、2018年度に岩手県宮古市において実地研究調査を行う。ただし、データの蓄積のために、2017年11月から12月に別途質問紙調査を行い、本研究課題に必要なデータを確保したことから、実地調査は2018年度夏季の1回と計画している。 2017年度にSQDを中心とした研究をまとめたことに加え、2018年度には調査対象群の属性と合わせ、『簡易GHQ(General Health Questionnaire)』『生活不活発病チェックリスト』を加えた量的分析とインタビュー内容を合わせて分析した質的分析を行い、本研究課題の全体像をまとめ、学会発表又は研究発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前年度に研究を進める中で、進捗があり、研究フィールドの協力組織の調査協力を得ることができたため、研究調査データを拡充、充実させることができたことから、次年度は全体の研究のまとめに早期に取り掛かることにし、実地研究調査を夏季の1回にした。そのため、次年度使用額を前倒しにして使用したが、残額不足により前年度末の出張の旅費を前年度未使用額及び平成30年助成金から支出した。
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Research Products
(2 results)