2016 Fiscal Year Research-status Report
震災後の家計の消費行動の解明と地域経済復興への影響評価
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16K12390
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
梶谷 義雄 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (80371441)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 震災リスク / 復旧 / 地域経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、過去の大規模地震災害(1995年阪神大震災、2004年新潟県中越地震、2011年東日本大震災)に加え、本年度発生した熊本地震を対象に、月別統計である家計調査データを整理し、これら地震においては、震災後の一定の期間において需要が大きく減少していることを確認した。さらに、各災害に対する地震動分布の情報と被災地域周辺に立地する世帯の空間分布データを収集し、需要減少とエクスポージャー(地震外力にさらされる人口)の関係をマクロに分析するためのデータベースを構築した。2016年熊本地震に関しては、企業の復旧状況や電力、水道、ガスなどのライフライン途絶状況の調査についても実施し、これまでに検討が進められてきている東日本大震災との比較分析を可能とするための準備を行った。また、需要の変化を把握するための別のアプローチとして、県内の特定商店街を対象に通行量調査や店舗の復旧状況調査を定期的に実施する体制を整えた。本年度は計3回の調査を一定間隔で実施し、需要の回復状況に影響を及ぼす要因をミクロ的視点で分析するための基本データを蓄積しつつある。 消費パターンの変化が地域経済へ与える影響を評価するために、分析の基礎となる一般均衡モデルについても検討を実施した。災害時特有の需要と供給がバランスしないような条件(不均衡)設定のもとで、過去の大災害(東日本大震災)の再現性を検証するなど、モデルの基本性能の把握に取り組んだ。得られた成果の一部は、国際産業連関学会の災害影響分析のセッションにおいて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計調査については政府統計を中心にデータ整備を進めることができ、震災影響の概要を把握することができた。 また、特定の地震や地域を対象に、災害時の需要変化をより詳細に把握するための基礎データを蓄積しつつある。さらに、需給双方の震災ショックを考慮した地域経済モデルについても基本的な性能評価を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度構築した災害後の需要関係データベースの分析を進め、震災の外力の規模とその影響度を設定するための統計モデルを構築する。同時に、交通量調査等のミクロな調査結果を活用し、人口分布の空間パターンの変化から復旧状況の把握や家計の消費構造変化を推計するためのモデル構築に取り組む。また、東日本大震災と熊本地震を具体的な事例として取り上げ、供給側と需要側の双方のショックを考慮した一般均衡モデルの開発を実施する。
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Causes of Carryover |
本年度実施を予定していた家計のアンケート調査の代替案として、人口分布の時空間変動を活用したアプローチを考案し、こちらの手法のほうが地域全体の消費動向と整合性の高い手法を構築できる可能性が高いことから、本年度におけるアンケート調査の実施を見送った。新たなアプローチには、人口分布データであるモバイル統計データの利用を予定しており、本年度予算をその購入に活用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の利用計画を予定している。物品費(モバイル統計データの購入含む):120万円、旅費(熊本地域や東北地域での復旧調査:50万円、その他:10万円。
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