2017 Fiscal Year Research-status Report
震災後の家計の消費行動の解明と地域経済復興への影響評価
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16K12390
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
梶谷 義雄 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (80371441)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 震災リスク / 復旧・復興 / 地域経済 / 消費構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて、2016年の熊本地震によって被災した商店街を対象に、通行量調査や店舗の復旧状況に関する調査を定期的に実施し、地震災害による被害と消費行動の関係を分析するためのデータを蓄積した。観測期間において、同商店街に立地する大型の旗艦店舗が復旧しており、地域の旗艦店舗が消費者行動に与える影響が明らかにされつつある。また、本商店街が立地する周辺地域に重点を置きつつ、熊本県全域の約2000世帯のご家庭に協力をいただき、震災直後からの消費行動の変化についてのアンケート調査を実施した。複数の大型店舗が被災することで、消費者がその後の日常品の買い物に困窮している様子だけでなく、自粛に伴う娯楽系の活動に関する消費低迷や被災に伴う耐久消費財の購入タイミングの変化などが観察されている。 さらに、地域の供給構造と需要構造の変化による地域経済全体への影響を評価するために、空間的一般均衡モデルの改良に取り組んだ。特に、これまで先行的に研究を進めている供給構造の変化を考慮した空間的一般均衡モデルについて、短期シミュレーションや不均衡の概念、価格の持つ役割等の諸条件を精査し、災害時特有の経済活動の状況に適用できるようにモデルを改良した。本モデルを東日本大震災のケースに適用したところ、地域間の経済的被害の波及を比較的精度よく再現できることが示され、災害後3カ月程度の期間を対象とした経済影響分析の基本モデルについては概ね完成したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計を対象としたアンケート調査では、当初の予定よりも多い約2000世帯の協力を得ることができ、 災害直後からのバラエティに富んだ消費行動パターンを観測することができた。消費行動モデルと結合するための空間的一般均衡モデルについても災害時への適用方法についての考察を深め、実証に成功しつつある。以上を鑑みると、データとモデルの両面において順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度収集した震災後の家計の消費行動に関するデータを用い、震災後の家計の消費行動の解明をおこなう。得られた結果を、自然災害による経済的影響を評価するための空間一般均衡モデルに組み込み、災害保険等の各種施策の効果について試算した事例を提供する。
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Causes of Carryover |
全体額に対する次年度使用額は少なく、ほぼ計画通り予算を使用している。次年度使用額分は、関連する資料の購入などに充てる予定である。
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