2017 Fiscal Year Research-status Report
マトロイド分解理論・不変多項式と量子物理の融合による計算論的組合せ物理の研究
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16K12392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルゴリズム論 / マトロイド / Tutte多項式 / 組合せ物理 / マトロイドマイナー理論 / 6点モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、グラフマイナー理論・マトロイドマイナー理論と、Tutte多項式に代表されるマトロイド不変多項式理論の研究を、計算論的組合せ物理と融合する方向を模索することにより、新たな研究分野としての計算論的組合せ物理の計算面からの基盤を構築し、組合せ論そのものへの融合を図ることを目指している。組合せ物理の分野では、2010 年代では交代符号行列とIce modelの新予想が解決されており、本研究ではさらに計算の観点から組合せ物理を発展させ、計算により問題解析を可能にすることを目指している。 本年度の研究においては、初年度の成果をさらに発展させ、研究代表者の今井が研究協力者の平石らとともに、Ice modelでの計算面からの新成果を得ることができた。これまでIce model計算に対するFixed-Parameter Tractable (FPT)アルゴリズムは知られていなかったが、とるべきパラメタをcarving widthまで緩めた場合に効率的なFPTアルゴリズムが構築できることを示した。carving widthは点の最大次数以上となるが、この物理モデルで現れるグラフは通常定数次数であり、Ice modelに対するFPTアルゴリズムとして有意義なものとなっている。さらに、Ice-type modelである6点モデルの分配関数計算に対しても、上記アルゴリズムを拡張したFPTアルゴリズムを構成した。これにより格子グラフのような幅が点数の平方根である問題を実用的時間で解ける範囲を広げた。前年度のIsing物理モデルに関する成果をより一般なPottsモデルに拡張することにも成功しており、Tutte多項式や量子計算の観点から新たな知見を得ている。マトロイドのTutte多項式の単峰性・対数凹性に関する計算機実験を通して、単峰性が成立しない特異なものの特徴づけを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ising物理モデルが2点間の相関力を考えてグラフでの枝の重みに着目していたのに対し、グラフの点の重みで気体やさらに複雑なモデルを対象とするIce型モデルへのアルゴリズム展開を実現することができており、それによってIce型モデルに対するFPTアルゴリズムを構築している。IsingモデルからPottsモデルへのFPTアルゴリズムの拡張、Tutte多項式の単峰性の反例も新たに得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の成果発表を行うとともに、Tutte多項式の単峰性の反例についての解析を精緻に行うことを行い、そこまでをまとめて本研究の成果として発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
これまでの計算解析結果をもとにTutte多項式の単峰性の反例を見つけ、その詳細な解析を継続して行って成果としてまとめたものを含め、これまで得られた成果を国際会議・ジャーナル等で発表を行う。
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