2017 Fiscal Year Research-status Report
臨床試験で競合リスクに相関がある場合の新たな治療効果判定方法の開発
Project/Area Number |
16K12400
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生存時間解析 / 無再発時間 / 競合リスク / 複合エンドポイント / ハザードモデル / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床試験の評価尺度として、Time-to-Event データ(ある時点から注目するイベントが発生するまでの時間)がしばしば用いられる。また、Time-to-Event データの統計解析では、追跡不能または研究終了によるイベント発生の観察不能の打ち切り例を含む。本研究の目的は、以下の実用上の問題点を生存時間解析の統計理論とモンテカルロ・シミュレーションにより解決することである。 (1)特定の死因の症例をイベント発生例、他の死因の症例を打ち切り例とした競合リスクが存在する場合でのログランク検定の性能(サイズ(第Ⅰ種の過誤の大きさ)、検出力など)の評価 (2)主要評価尺度として、複数のイベントのどれかが発生すればイベントありとする複合エンドポイントの場合のログランク検定、比例ハザードモデル解析の問題点の洗い出しとその解決策 (3)主要評価尺度を無再発期間、副次評価尺度を生存期間に設定した場合、無再発期間が真の評価尺度である生存期間の代理評価尺度になりうるか否かの検討 平成29年度にはこれらの問題のうち、(1)と(2)について実際の臨床試験データや臨床疫学データに基づき検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、無再発期間が生存期間の代理評価尺度といえるか否かの理論的アプローチとシミュレーションによる検証を、乳癌の臨床試験データや肝細胞がんの臨床試験データ、ならびにいくつかの臨床疫学データの解析を通して行った。 後述の研究発表に示されたさまざまなTime-to-eventデータに基づき、無再発期間と生存期間の同時確率分布モデルを検討した。モデル構築に際しては、無再発、再発、死亡の3つの状態の相互関係について検討した。相互関係に基づく同時確率分布の理論的な考察は、実臨床試験データに合わせて症例が不均一な場合を想定したモデルの構築を考えた。 (1)状態間での遷移確率をモデル化するために、ハザード関数(瞬間死亡率)λk(t) (tは時間、kは状態の遷移)を用いた。たとえば、再発後に死亡へ遷移する確率を推定するためのハザードモデルとしてλk(t)=λ0(t) Zexp(γ(t)+f(X,β))を仮定した。ただし、λ0(t)は任意の正値関数、γはkの遷移リスクの増減を表すパラメータ、ZはFrailty項、Xは予後因子ベクトル、βはその回帰係数。これにより、症例の属性情報や疾患の重症度により無再発期間と生存期間の関連度が変化することも考慮したモデルとなる。 (2)ハザード関数を用いて、無再発期間と生存期間との同時確率分布モデルを構築することを試みた(今年度に継続)。それにより、モデル内のパラメータ推定のための尤度関数を作る。Zはベータ関数に従うことを仮定する。臨床試験の実データを使って同時確率分布のパラメータを推定する。 (3)本研究で開発された2つの評価尺度(上述の例では、無再発期間と生存期間)の同時確率分布と相関係数、その他の推定値が、対応する理論値や真値とどれくらい近いのかを調べるためにモンテカルロシミュレーションを行うためのアルゴリズムを考えた。2つの評価尺度の相関の強さから代理変数の実用上の定義を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、競合リスクと複合エンドポイントに対する同時確率分布理論の応用とシミュレーションによる評価を行う。Event間で相関がある場合の競合リスク下でのTime-to-Eventの同時確率分布の性質を調べる。 (1)相関のある2つのEventを仮定した競合リスクにおいてその相関係数を変動させて、ログランク検定のサイズと検出力がどのように変化するのかをモンテカルロ・シミュレーションにより確認する。また、競合リスクが存在する場合に用いられるGrayの検定との同様な性能評価も行う。これにより、どのような条件下でログランク検定を使ってよいのかが明確になる。 (2)複合エンドポイントに対しても、本研究で得られた理論の適用可能性を検討する。特に、対照群と新治療群で複合エンドポイントの個々のEvent発生率に違いがある場合、治療効果判定にどのような影響があるのか、主にサイズに注目してシミュレーションを行う。 (3)これらのシミュレーションによる評価は以下の条件の下で行う:対照群と新治療群における競合リスク(複合エンドポイント)の個々のイベントの発生率、臨床試験全体でのイベント発生数、打ち切り条件(途中打ち切りの有無、タイプIセンサリング)、サンプル数(1群50例から1,000例程度まで)。 (4)研究成果を英文論文にまとめて統計学関連の専門誌に投稿する。また、本研究成果の学会への普及をめざし海外・国内の統計学会ならびに関連学会で報告する。
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Causes of Carryover |
29年度においては経費節減につとめながら研究をすすめることができた。30年度からの詳細な解析結果を基に研究成果を英文論文にまとめて統計学関連の専門誌に投稿し、本研究成果の学会への普及をめざし海外・国内の統計学会ならびに関連学会での報告を行なう予定である。未使用分はその経費として今年度分との合算使用とする。
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Research Products
(5 results)