2016 Fiscal Year Research-status Report
位相的な厳密性を保証する近似アルゴリズム図形処理のフレームワーク
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16K12435
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今井 敏行 和歌山大学, システム工学部, 教授 (90213214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高性能計算アプリケーション / 図形処理 / 計算幾何 / Voronoi図 / Delaunay図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,図形処理の分野で,近似アルゴリズムによっても位相的に厳密な処理が可能なことを,種々の問題例によって示し,図形処理の新しいフレームワークを提案,構築することを目指すものであった. そのため,初年度である平成28年度は一般論でなく,個々の問題である,平面図形による勢力圏分割について,位相的に厳密な近似アルゴリズムを構築する計画であった.近似アルゴリズムのベースとしては,点集合を生成元とする勢力圏分割(ボロノイ図)を計画通り選択し,生成元を線分集合,円集合とする勢力圏分割の,位相的に厳密な構成アルゴリズムの構築に成功した.それに加えて,アルゴリズムの性能評価も行った.生成元の線分や円を点群で近似するため,点が少ないほどアルゴリズムとしての高速性が確保できるが,位相的に決定が難しい部分があると,精度確保のために点数が増加する.一般的な入力として,乱数を用いた実験を行い,位相的に決定が難しいところのアルゴリズムの挙動を,入力の位置を,近似点数が増加する方向へ少しずつ移動して実験を行った.これらの結果を,適宜9月の日本応用数理学会年会や,3月の情報処理学会全国大会で発表した. 平成29年度以降に,より一般的な図形処理分野に取り組む計画であるが,これらの予備的研究として並行し,Lpドロネー図の研究を行った.Lpドロネー図はボロノイ図の双対であるドロネー図の一般化である.この研究で一般化ドロネー図に関する知見を蓄積させ,これまでの成果を適宜9月の日本応用数理学会年会と情報処理学会関西支部大会や,3月の情報処理学会全国大会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成28年度は計画の通り,一般論でなく,個々の問題である,平面図形による勢力圏分割について,位相的に厳密な近似アルゴリズムを構築した.近似アルゴリズムのベースとしては,点集合を生成元とする勢力圏分割(ボロノイ図)を選択し,生成元を線分集合,円集合とする勢力圏分割の,位相的に厳密な構成アルゴリズムの構築に成功した.それをプログラムに実装して,アルゴリズムの性能評価も行った.生成元の線分や円を点群で近似するため,点が少ないほどアルゴリズムとしての高速性が確保できるが,位相的に決定が難しい部分があると,精度確保のために点数が増加する.一般的な入力として,乱数を用いた実験を行ったところ,問題の規模によらず,線分や円の個数の定数倍(数倍程度)の規模の点群で十分であることがわかった.位相的に決定が難しいところのアルゴリズムの挙動を,入力の位置を,近似点数が増加する方向へ少しずつ移動して,点数の増加傾向を計測したところ,倍精度実数の誤差限界までで,1か所あたり,近似点数は1~2点の増加にとどまった.これらから,提案アルゴリズムの計算量オーダは,事実上増大しないことがわかった.これは,予想を超えた好結果である.これらの結果を,適宜,学会発表し好反応を得た. 平成29年度以降の,より一般的な図形処理分野に取り組む計画では,線分や円と異なり,交点などを厳密に求めることができない図形を対象とすることになる.これらの予備的研究としてLpドロネー図の研究を並行して行い,学会発表を行うこともできた. このように,計画部分で予想を超えた成果を得て,続きにも着手でき,研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗が,おおむね順調に進展しているため,当初の計画から大きな変更はない. 平成29年度は,平成28年度の成果を論文化して投稿するとともに,当初計画通り,ベジエ曲線で囲まれた図形の凸包の構成や勢力圏分割など,より一般的な図形処理を題材に選び,本研究の目指す,近似アルゴリズムによる結果の位相的な厳密性の保証に向け,選んだ題材の図形処理自体の研究と新しいアルゴリズムの構築を進めていく.本研究の最終の平成30年度の計画に,個々の図形処理アルゴリズム研究のフレームワークとしての統合があり,それを常に考えながら,個々の研究を行い,統合の準備を進める. 本研究分野の研究動向を情報収集しつつ,研究成果は適宜発表し,個人研究ではあるが,広く外部の意見を研究の進捗に役立てる.計画通り,大型機材の新規導入は避け既存設備を有効利用し,初年度機材の必要最小限の増強にとどめる. 研究を徒に複雑にしないため,3点が1直線上にあるなど,入力退化とよばれる入力図形の形状,配置の異常や,計算誤差の影響は,本研究からは除外しているが,本研究の終了後,将来的にはこれらも含められるよう,どのような問題が発生し得るかも考慮しつつ研究を進めていく. 最終の平成30年度は,平成29年度の研究進捗を踏まえ,個々の研究を統合し,新しい図形処理フレームワークを提案する.成果を早い段階から学会発表し,討論を通じて研究を深化させ,幅広い領域で有効に応用可能な理論を論文としてまとめる.
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Causes of Carryover |
計画に従い支出をしようとしたところ,初期導入する機材が計画時の物が廃止され,更新されたモデルを導入したところ,為替レート変動もあり価格差が発生した.そのため,平成29年度に使用する額が,平成28年度の所要額の約2パーセント発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大型機材の新規導入は避け既存設備を有効利用し,初年度機材の必要最小限の増強にとどめる.具体的にはメモリとデータストレージの増強程度にとどめる.その他は主に,本研究分野の研究動向の情報収集と,広く外部の意見を研究の進捗に役立てるため研究成果を機動的に発表するのに使用する計画である.
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