2016 Fiscal Year Research-status Report
出会いと挨拶行動の相互行為論的研究 -人間と動物の共通の基盤から
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16K12445
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 大治 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (40242573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藪田 慎司 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (50350814)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 出会い / 挨拶 / 文化間比較 / 動物と人間 / 行動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は研究計画の初年度である。今後の展開のベースとなる「挨拶」と「出会い」の具体的な事例を検討するとともに,そこから,今後議論していくべき論点を抽出した。具体的には,下記のように6回の研究会を開催した。 (1) 2016年5月28日 今後の進め方の相談会。木村による説明,参加者からの動物の挨拶高度に関する映像の提示。(2) 7月23日 研究発表 花村俊吉「HRAFの紹介・『あいさつ』分析の方法」,坂巻哲也「霊長類研究の論文に出てくる『挨拶(greeting)』について」「ワンバのボノボの集団内で離れて遊動していた個体同士が出会った時の社会交渉について」。(3) 10月14日 研究発表 相原一究「カエルの発声行動の数理的・実験的研究」。(4) 2017年1月23日 「匿名性」に関するブレーンストーミング,映画「リゾラド」を見て,異文化間の出会いについて考える。(5) 2月12日 研究発表 香田啓貴「ヒト以外の霊長類の音声交換」(6) 3月12,13日 山梨における合宿。研究発表 木村「出会いにおける『規則性』の性質」岩谷「応援活動から見るパフォーマンスとしての出会い」岡田「『未知』との出会いとファーストコンタクト -霊と地球外生命体の連続性と非連続性」花村「非対面下の出会いの特徴: チンパンジーの長距離音声を介した相互行為から」藪田「『挨拶』研究で何を目指すか: 答えたい問題のリスト」。その後,河口湖において猿回しの見学,人間と動物の相互交渉についての観察をおこなった。 これらの研究会において,今後議論していくべきいくつかの鍵概念を抽出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,参与者間に「それ以前のいきさつ」がない場において,新たに相互行為を立ち上げる「出会い」の場で何が起こっているかについて考えることによって,相互行為の成立基盤を明らかにすることである。2016年度は,研究会で提示された人間および動物におけるさまざまな事例を検討することによって,問題とすべきいくつかの概念を明らかにすることができた。それらは「儀礼性と空疎性」「相称性と相補性」「匿名性と個体性」「定型性と不定型性」などである。これらの手がかりを得たことから,一見つかみ所のない「出会い」「挨拶」を考える上で,基礎的な作業が達成できたと言え,計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,昨年度の研究会で明らかになったいくつかの問題点について,より考察を深めていくことを目標とする。具体的には,昨年度同様,5~6回の研究会を開催し,出会いと挨拶の具体的な事例を検討する。その対象は,HRAF(人間関係地域ファイル)などから得られた民族誌的な事例,および動物の行動の事例である。それとともに,抽出されたいくつかの鍵概念について理論的な検討を加えていく。最終年度に,成果出版をおこなうことを計画しているので,各参加者の書くべき具体的な内容についても検討をおこなっていく。
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Causes of Carryover |
全額使い切る予定であったが若干の誤差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度,旅費等で有効に活用する予定である。
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Research Products
(11 results)