2018 Fiscal Year Annual Research Report
An experimental study of autism spectrum disorder in relation to social structure
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16K12446
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 幸織 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (10645584)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 認知機能 / 社会認知 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自閉症スペクトラム(ASD)を持つ児童を対象に、社会的順位がどのように構築、認識されるかを解明する。本研究を開始するにあたって、昨年度は、社会的順位の認識を評価する心理課題の作成を行い、予備実験を行った。その結果から、必要と思われるいくつかの補助的な質問紙と心理課題を追加で作成し、本実験と合わせ実施した。また、本実験の心理課題では、同時にアイトラッキングを行い、被験者からは尿のサンプルを採取し、尿中のセロトニン計測を計測した。これらの実験の結果から、以下のことが見出された。(1)ASD児は、定型発達(TD)児とくらべ、社会的順位の認識がより強いことが見出された。(2)また、このような社会的順位の認識を社会的文脈(例えば、会社の上司が部下を怒っている様子など)によるものと、物理的特徴(例えば、体の大小など)によるものとに分けた場合、物理的特徴による社会的順位の判断は、ASD児とTD児での間では差がみられなかったが、社会的文脈による社会的順位の判断では、ASD児のほうがTD児よりも、より明確に順位の判断を行うことが見出された。(3)その結果、社会的文脈と物理的特徴が相反するような条件(例えば、小さな子供が体の大きな大人を叱るなど)では、TD児では社会的順位の判断が弱まる傾向が見られたが、ASD時では、そのような場合でも社会的順位の判断は弱まらないことが見られた。したがって、これらの結果から、ASDでは、一般的に社会的シグナルの読み取り(例えば、相手の目から感情を読み取ることなど)の困難が示唆されているが、社会的順位の認識においては逆に、順位に関連する社会的シグナルをより強く読み取ることが示唆された。
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