2016 Fiscal Year Research-status Report
センサ融合とクロストーク除去によるハイパースペクトル画像計測の高感度化
Project/Area Number |
16K12457
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊澤 逸夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70186469)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マルチスペクトル画像センサ / センサ融合 / 逆問題 / クロストーク除去 / 分光 / デコンボリューション |
Outline of Annual Research Achievements |
当課題では、従来光学系でスペクトルを完璧に帯域別に分離しようとしていたハイパースペクトル画像センサの原理を見直し、光学系には不完全さを許容した上で、その不完全さによって生じる帯域間や画素間にクロストークを後段の信号処理によって取り除くことを目指している。光学系に不完全さを許容することによってハイパースペクトル画像センサを画期的に小型軽量化、低コスト化して、またさらに計測に要する時間を短縮し、利用用途を広げることを目指している。本年度はこの目標に向けて、28年度には通常のカメラの光学系にプリズムやマイクロプリズムを挿入した最も簡易な機構を試作して、このような簡易な機構でも後段の信号処理方式を工夫することによって、光学系で生じたクロストークを除去することを試みた。元々は次の(a)~(d)を28年度の課題としていたが、上述した簡易な構成の光学系では、後段の数値処理が悪条件の逆問題となることが判明したため、(a)で予定していた「ピッチの縮小化」を行う前に構成そのもを見直すこととなり、計画よりも進捗は遅れている。(当初の設定課題:(a)分光に使用しているマイクロプリズムアレイのピッチを50ミクロン間隔から数ミクロン間隔に変更する。(b)ピッチを狭くしたことにより回折現象も生じるため、プリズムによる屈折と回折による干渉が混在した場合の分光現象を幾何光学的に解析する。(c)この解析結果に基づき、空間的なクロストークと異なる波長帯間のクロストークの数理モデルを構築する。(d)この数理モデルに基づきクロストークを除外するアルゴリズムを作成する。) しかしながら、そうした構成の見直しの結果、新たにマイクロプリズムの手前に特殊な2次元ドット開口パターンを備えたスリットを設けることで後段の数値演算を好条件化する方式の着想を得て、現在この着想に基づく光学系を設計しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述した事情により当初28年度に計画していた以下の(a)~(d)の課題を見直して光学系の設計からやり直すことになった。しかしながらその見直しの結果、後段の信号処理による逆問題の解の存在条件、計算条件が改善され、得られるマルチスぺクトル画像の精度も改善することが見込まれるようになった。当初は逆問題の解が正常に求まらない原因が分からなかったため、光学系の製作精度に原因があるのではないかと思い、何度も作り直していたため、試作の繰り返しに多大の時間を費やし、また逆問題の解法も各種考案し直して、逆演算の数値処理の試行錯誤も繰り返ししたため、研究の進行が大きく遅れることになったが、そうした努力によって今後の見通しが立ったため、29年度中に遅れを挽回して、当初設定した目標は達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した課題の見直しと方針に従って、29年dのは以下の手順で研究を進める予定である。(a)新たにマイクロプリズムの手前に特殊な2次元ドット開口パターンを備えたスリットを設けることで後段の数値演算を好条件化する方式に基づく光学系を設計する。(b)この新たな光学系に対してクロストークの生じ方を理論的、実験的に解析する。(c)この解析結果に基づき、クロストーク除去の数値的手法を研究する。(d)この新たな着想に基づく光学系を試作して、後段の数値処理方式も実装し、マルチ(ハイパー)スペクトラム画像センサを製作する。なお以上の見直しに伴い、28年度に支出を予定していた試作費用は29年度に引き継ぎ、29年度の試作費用を多めに確保する予定である。
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Causes of Carryover |
前述したように当初計画していた光学系に問題が見つかり、そのままでは予定していた(a)~(d)の計画を実行しても無意味となることから、根本的に光学系の設計を見直したため、28年度に計画していた光学系の試作ができなくなり、その試作費を29年度に廻して29年度に光学系を試作することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初28年度中に計画していた光学系の試作を根本的に見直し、新たにマイクロプリズムの手前に特殊な2次元ドット開口パターンを備えたスリットを設けることで後段の数値演算を好条件化する方式に基づく光学系を試作するための費用に充てる。
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