2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K12471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷川 智洋 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (80418657)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / マルチモーダルインターフェース / 認知科学 / 情動・感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,感情の変化と関連のある身体反応を擬似的に生成・再現する装置の開発を行うとともに,開発した装置が身体反応を模しているか,感情喚起に有効か評価する.また,次年度に向けて,感情センシング基盤の構築を行った. まず,他者からも観測可能な身体反応を擬似的に生起・再現する装置の開発を行った.特に,悲しみや感動,喜びといった感情状態と関連のある涙に注目し,目元から頬にかけて人工涙液を流すことで擬似的に涙が流れているように錯覚させる眼鏡型のウェアラブル装置を作成した.眼鏡を承着した実証実験を行い,装着者に対して悲しみや感動といった感情寒気ができていることを確認した.さらに,個人または小規模集団(3名程度)において擬似身体反応提示装置の効果の確認を検討した.具体的に,(1)で構築した眼鏡型のウェアラブル装置を実際に被験者に使用してもらい,擬似的な身体反応が実際の身体反応として錯覚できるほどのリアリティを持つか,その効果を確認した.擬似身体反応提示装置を使用する被験者と,提示される擬似身体反応を観察することが可能な最小限の人数である3名程度の被験者において実験を行い,提示手法の有効性を判断することができた. 感情状態の測定に関しては,被験者自らに実験中の感情状態についてアンケート的に答えてもらうだけでなく,カメラを使った表情変化の測定や,ウェアラブルデバイスによる心拍変動や皮膚電位変化を指標として使うなどして定量的に集団の感情状態をセンシング可能な手法を調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、泣く感覚を再現することで感情体験を操作する手法を提案した。そして、水の流れを制御し、ユーザの目元に水滴を落とす眼鏡型の装置として「涙眼鏡」を作成した。被験者実験を通して、眼鏡を装着し涙が流れる触覚的な体験を与えた被験者だけでなく、その周囲にいる擬似的な落涙を観測した被験者の悲しみの気持ちまでも操作できることを明らかにした。すなわち、擬似的な身体反応を使って複数人の感情体験を操作できることが分かった。 さらに、実展示を通して、体験者の反応やコメントから、感情体験の変化や影響の受け方を考察し、感情喚起に必要な特性や環境的要素を調査した。その結果、実験室外の環境においても、体験者の感情状態に影響を与えられることが分かった。また、周囲の環境音が感情喚起に影響することが示唆され、触覚的な体験を知覚しやすい環境において効果を発揮しやすいことが分かった。さらに、体験者を観察することで、装置の形状を改善することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
被験者実験と展示の両方で、電磁弁の開閉音が気になるという指摘があった。今後は、音のしないアクチュエータを搭載したり、機構を工夫したりすることで動作音を無くし、体験者がより感情喚起の効果を感じられるような展示形態を目指したい。 今回の実験では、涙と悲しみの感情の関連性をもとに、ニュートラルな映像刺激を眺めている間に涙を付加することによって悲しみを喚起することを目的とした。しかし、感動や嬉し泣きのように涙を流す場面は、必ずしも悲しいときだけではない。こういった場面では、涙を流すことで、その時に抱いていた気持ちが堰を切ったようにあふれだし、感情を増幅させているのではないかと考える。そのため、ニュートラルな映像刺激に代わって、感動する映像や悲しい映像を使用し、そこに涙を付加することで感動や悲しみといった感情状態が増幅されるか調査したい。
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Research Products
(4 results)