2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12484
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウェアラブルコンピューティング / 擬人化 / ヒューマンエージェントインタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、他者の意図を読み取り、他者の視線の動きに合わせたユーザの社会的応答を補佐するためのデバイスを作成する。対面コミュニケーションでは、非言語情報によって伝達される情報が非常に多いことが知られている。特に視線によって伝えられる情報は重要である。人は視線によって他者の感情や興味注意対象を理解し、会話における発話権の維持や譲渡をおこなう。しかし視覚障がい者にとって、他者の視線情報を理解することや、会話の相手に対して視線を送るといったような自身から視線情報を発信することは困難である。従来の研究から、視覚障がい者は他者の視線情報を得ることが出来ないために、対面コミュニケーションに対して不満を抱いていることが分かっている。従来の研究では、視覚障がい者の非言語情報によるコミュニケーションを支援するインタフェースの開発がおこなわれていた。しかし、従来の研究では主に表情について着目しており、対面コミュニケーションにおいてより重要と考えられている視線についてではない。また、他者の表情を視覚障がい者に伝達することを目的としているため、自身から視線を使った非言語情報を発信することは出来ない。 そこで本研究では、視覚障がい者の対面コミュニケーションに対する不満を軽減し、視線を用いたより自然な対面コミュニケーションを可能とするため、視覚障がい者の視線コミュニケーションを支援するウェアラブルデバイスAgencyGlassを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年は、前年度までに開発した視線フィードバックデバイスAFGlassを用いた、視線追従とフィードバックの評価を行った。本デバイスにより、自分自身で自分の思い通りに相手と視線を合わせるなど、視線の社会的な機能を阻害されているユーザに対し、視線表出の補助を行う。AFGlassは、他者の視線情報の取得、自身の視線の発信を可能とすることで、視覚障がい者の対面コミュニケーションにおける不満を軽減し、かつ会話の話者交代をスムーズにすることで、会話をより円滑にすることを目的としている。また、AFGlassの機能が装着者や対面者の感じる会話や会話相手への印象にどのような影響を与えるかを評価する実験をおこなった。その結果、フィードバック機能によって装着者の会話のしやすさや理解度が向上し、トラッキング機能によって装着者はより自然なふるまいに見えることが推測された。また、フィードバック機能によって2者の会話がより円滑となることが推測された。特に、フィードバックを受けた発話側ではなく、その様子を見た相手側に対しても発話のオーバーラップが少なくなり、会話の円滑さに向上が見られたのは大きな利点である。以上のことからAFGlassの機能によって視覚障がい者の対面コミュニケーションをより円滑にすることが出来ることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回明らかとなったAgencyGlassの問題点を改善するとともに、視覚障がい者からの意見を得て、対面コミュニケーションの支援におけるAgencyGlassの問題点や意見を得る。技術的な問題として、人によっては振動が強すぎてしまい、会話の妨げになってしまう可能性が示されており、使用する振動モータの出力をより弱いものにし、振動音の発生しづらい箇所に搭載することを検討している。また、もう一つの問題点として、振動が連続すると混乱するという点が挙げられている。振動が連続して発生する場面として、たとえば対面者が左から右へと注視方向を移した場合が挙げられる。このとき、装着者には正面、右方向と2回連続で振動が送られてしまう。また今回は対面者の注視方向の移り替わりを頭部の回転角度を閾値によって判断したが、対面者が閾値前後で頭部の回転角度を固定した際、センサの誤差によって連続で注視方向の移り変わりを認識してしまう場面があった。 現段階の実装では装着者へのフィードバックの速度を重視したために上記のようなアルゴリズムを実装したが、いくつかのアルゴリズムを実装し、会話支援において最適な対面者の注視方向の移り変わりの認識精度とフィードバック速度を模索する必要がある。本年度はこれらの知見をまとめ、インタフェースに関する学会への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験は順調に行われ、成果も出たが、評価時に遅れが見られたため、論文執筆が本年度開催の学会に間に合わず、その分の旅費および学会参加費、論文投稿費が2018年度にずれ込んだ。本成果は最終年度中に投稿を行う予定である。
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