2017 Fiscal Year Research-status Report
大規模エージェントシミュレーションにおける途中分岐実行の実現とその応用
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16K12488
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鎌田 十三郎 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (20304131)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分散集合ライブラリ / 人工市場シミュレーション / 分枝実行 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29 年度は主に分散集合ライブラリの記述の柔軟性に重点を置いた研究をおこなうと同時に、人工市場シミュレーション基盤 Plham においてエージェントおよび市場の状態管理を分散集合ライブラリに集約する作業をおこなった。また、Plham については、途中状態の保存および保存状態からの再実行機能をテスト実装し、Plham の状態管理が確実に行われていることを確認した。 分散集合ライブラリの機能強化については、各要素に関するデータ並列的処理に関して、スレッドプールを用いた非同期的実行を容易に記述することができるようにする一方で、分散集合内でのノード間データ移動について高い抽象度で記述できるように、ライブラリの整備をおこなってきた。これにより、遅延隠蔽のためにデータ並列的処理とノード間通信を同時におこなうといった高度なスケジューリングについても、容易に記述することができるようになった[SWoPPにで発表]。また、ライブラリの種類については、キーバリューストアである Dist(Id)Map, Dist(Id)MapList に加え、要素を集約するための DistBag, 再配置可能な分散配列である DistCol, 各ノードにデータキャッシュを配置可能な配列である DistCol など、各種用途のためのライブラリを作成している。 このように分散集合ライブラリの機能向上を図ることで、大規模分散シミュレーションにおける状態管理を分散集合に集約することが可能となり、分散集合ライブラリに状態保存および複製機能を導入するだけで、容易にシミュレーションの分枝実行が可能となる。前述したように、実際に集合の状態保存および復元によりシミュレーションの動作再開を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の時点で分散集合ライブラリの状態複製および再配置に関するプロトタイプ実装が完了しており、H29 年度は分散集合ライブラリの機能充実を進め、現実の大規模エージェントシミュレーションに応用、その実用性の向上を図った。改良版 Plham についても H30年度初頭には公開予定であり、研究はおおむね順調に推移している。 本研究で利用する並列プログラミング言語X10 では、高並列分野のアプリケーションは各種存在するが、本件のような複雑なオブジェクトデータ構造などを扱ったものは少なく、そういった意味でも、独自性のある研究をすすめることができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である H30 年度は、分散集合ライブラリに対して、H28 年度に開発済みの状態の複製および再配置機能を再実装し、公開できるレベルに持ち込むことを一つの目標とする。このため、H29 年度に拡充された分散集合ライブラリの各種機能に適合する形で状態の複製および再配置機能を再デザインし、見通しの良い実装を与える。加えて、人工市場シミュレーション基盤Plham に対して、状態の複製およびシミュレーションの分枝実行機能を導入する。 そのうえで、Plham において、保存状態および分枝実行機能をどのように利活用できるか、Plham の開発者・ユーザグループと情報交換を深め、必要に応じて機能拡張などをおこなっていく予定である。現時点では、Plham では実行ログを保存しておき事後解析をおこなうような利用形態が一般的であるが、今後、各種シミュレーションを網羅的に実行していく際に、途中状態の分析に基づいた実行の複製・打ち切りなどが有効であるかなどについて、検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
Plham および分散集合ライブラリを含めた研究申請が、H28年後半からポスト京萌芽課題に採択されたため、両方の研究を補完的な形で進めている。このため、当初予定していた備品や海外出張などの費用を大幅に節約することができた。節約できた分の予算は、当該分散集合ライブラリを対外公開するにあたって必要となるコードレビュー(外注)などの費用に充てる予定であり、研究成果物をより充実した形で公開するために役立てる予定である。
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Remarks |
Plham の処理系は、github において公開中です。
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Research Products
(6 results)