2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12506
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 誠 東北福祉大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40326715)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感性情報学 / コミュニケーション工学 / 感性・ヒューマンインタフェース / 音響情報処理 / マルチモーダルインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,人間が無意識,かつ,瞬時に判断する場の雰囲気を,聴覚科学の観点から科学的に分析し,その知見に基づいて雰囲気を積極的に創出する雰囲気ジェネレータの試作を目指すものである。 平成29年度は,平成28年度に作成,実施した,視覚障害者の場,および,場の雰囲気の知覚アンケート調査の分析に注力した。最終的に集まったアンケートの総数は52名分である。先天盲(視覚経験のない方)と後天盲(視覚経験のある方)が半数ずつ参加し,また,全盲31名,弱視17名であった。アンケートの目的は,主として聴覚情報から場の雰囲気を知覚している視覚障害者が,どのような情報に基づいて雰囲気を知覚しているかであり,得られた結果を視覚経験の有無,言語的情報と非言語的情報で差があるかといった項目で分析した。得られた結果から,人が介在する状態での会話などの言語に関係した聴覚情報と,雑踏やドアの開閉など言語に関連のない聴覚情報で雰囲気に与える傾向が異なり,言語に関連する項目としては,声のトーン,会話の間,声の音程,相手の話すスピードなどが雰囲気を判断する上で重要なのに対し,非言語音では,ドアの開閉音,携帯電話を操作する音(ガラケーを閉じる音),書類をめくる音,対人距離などが寄与することが明らかとなった。特に興味深いのは,通常心内に存在するプロトタイプとの比較で雰囲気を判断する状況において,実際の場面の情報を得る機会のない視覚経験のない視覚障害者のプロトタイプ形成時にはテレビやラジオによって形成された脳内の雰囲気プロトタイプがベースになっていることである。これは,制作者(晴眼者)が意図したものを視覚障害者は敏感に感じ取っている可能性を示すものであり,これを強調したような音情報を提示することにより,本研究の目指す特定の雰囲気を作りだすことができることが実証されたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指す聴覚情報による雰囲気ジェネレータを構築する上で,視覚障害者がどのような情報を持って雰囲気を判断しているかは極めて重要な項目である。平成29年度の結果から,聴覚情報に敏感な視覚障害者であっても,晴眼者がイメージした場面での聴覚情報で心内のプロトタイプを構築している可能性が高いことが示された。したがって,一般的な形での雰囲気ジェネレータを構築できる目処が立ったことは本研究の推移にとって大きい。 以上のことから,本研究は概ね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得られたアンケート結果は非常に興味深いものであり,心内のプロトタイプ形成には,現実の忠実な再現よりは,それまでの各人の経験によるイメージに大きく影響されることが示されている。平成30年度は研究期間を延長し,実験データの追加分析を行って,各人のイメージを精緻化,分析することで,より高精度な雰囲気ジェネレータの構築可能性を探る。
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Causes of Carryover |
平成29年度に実施したアンケートでは,視覚障害者の雰囲気知覚について興味深い結果が得られ,その結果をより詳細に分析することで当初の想定以上の精度での雰囲気ジェネレータの構築可能性が見えた。そこで,試作に先立ってデータの分析を先行させて行ったこともあり,予算に差額が生じた。 平成30年度は分析を継続し,その結果を外部発表する際の予算として差額分を使用する予定である。
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