2018 Fiscal Year Research-status Report
自己と外界との心理的境界が生み出す「不気味の谷」:計算論に基づく存在証明の試み
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16K12518
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
植山 祐樹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (30710800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 仮想現実感 / 不気味の谷 / ラバーハンド錯覚 / 身体所有感 / 多感覚統合 / 認知科学 / ヘッドマウント・ディスプレイ / 神経生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ロボット工学における概念的仮説である「不気味の谷現象」の存在を自己意識と環境との不和による心理学的効果が作用する生理学的現象として証明し、その発生機序の理論モデルを構築することである。不気味の谷は、ヒューマノイドロボットの開発およびコンピュータ・グラフィックスの製作における重要な指針の1つである。一方で、不気味の谷は確立された概念ではなく、擬似科学との批判も存在する。本研究では、不気味の谷を自己意識と外界との不和によって生じる心理学的作用と仮定することで、その存在を計算論および生理学的指標の両面から明らかにし、その存在の有無に関する議論に終止符を打つことを目指す。
平成30年度は、前年度に構築したヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)による仮想ラバーハンド錯覚(RHI)実験装置を使用し、被験者実験を通して、RHIの発生と不気味の谷の関係を生理学的指標によって検証することを目標としていた。
そのために、皮膚温、皮膚の電位変化、および心拍を計測するための計測装置を構築し、HMDと触覚呈示装置を使用したプログラムの調整を行った。しかし、研究代表者が研究機関を異動したことで、それまでの研究環境が大きく変化し、本来計画していた実験を実施することができなかった。そのため、研究期間を1年延長することとし、平成30年度に計画していた実験を今年度に実施することとした。延長した本年度では、早急に実験を実施するとともに、その成果を論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平平成30年度は、生理学指標を収集するための計測装置を構築したが、研究代表者が研究機関を異動したことで、十分な実験を行うことができなかった。そのため、達成度としては遅れており、本来は平成30年度が研究期間の最終年度であったが、1年間延長することとした。今後、早急に実験を実施し、成果を論文としてまとめたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
10名の被験者を対象に、仮想ラバーハンド錯覚(RHI)実験に関する本実験を実施し、RHI発生と不気味の谷の関係を生理学的指標を用いて検証する。
不気味の谷は心拍等の生理学的指標に影響を与えることが報告されていることに加え、RHIにおいて身体所有感が生じた際に、実際の腕の皮膚温が低下することから、本実験では、心拍および皮膚温に加え、被験者の精神状態を強く反映すると考えられる皮膚電位についても計測し、それらと被験者の内観報告に基づく身体所有感との関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
理由:研究代表者が研究機関を異動したことにより、計画していた実験が実施できなかったため。 使用計画:本年度実施する実験に必要な消耗品の購入に使用する。
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