2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12524
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 進一 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (30029540)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニューラルネットワーク / シミュレーション / 刺激発信源 / 識別学習 / 多重通信 / 高速化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、神経素子数25×25のニューラルネットワークシミュレーションにおいて、個々のニューロンの発火時間間隔から刺激発信源の識別ができ、またシナプス伝播遅延と不応期の変動が多重通信を安定させることを示唆した。 本年度は、神経素子数9×9(合計81個)の小規模な2次元のニューラルネットワーク上において、刺激発信源の識別学習とHebbの学習則によりニューロン間の重みを変動するプログラムを作成し、スパイク応答をシミュレートした。具体的には、3種類の刺激発信源(垂直方向、水平方向、斜め方向に配置)を設定し、各刺激が識別に成功するまで学習させ、その学習回数を数えた。さらに、「第1回」の試行のスパイク伝播時間と、3種類の刺激における刺激の識別学習完了後の試行(以下、「学習後」)のスパイク伝播時間を計算して比較した。脳における情報処理を理解するために、最初の試行と学習後の試行における発火伝播時間を比較した。その結果、学習後の発火経路は学習前の発火経路よりも短くなることが示された。これはHebb則が発火経路の短縮に寄与し、それに伴ってニューラルネットワークにおける通信が高速化されていることを示唆しているものと考えられる。 また、刺激ニューロン群の刺激点数と受信ニューロン群の受信点数を変化させたシミュレーションと刺激点と受信点の配置をランダムにしたシミュレーションを行なった。その結果、3点刺激の方が1点刺激、2点刺激よりも学習回数が少なくなることが示せた。刺激点数が多い方が安定したスパイク波伝播ができると示唆された。 さらに,培養神経回路網に8×8多点電極をつけて刺激応答スパイク列を観測することにより,2か所からの刺激を正しく識別できる神経が多数あることが示され,シミュレーションの結果を裏付けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の特徴は,「神経回路網においては,多重通信の形で点対点の通信・情報伝達が行われている」との仮説を,シミュレーションと培養神経回路網におけるwet実験との対応を取りながら進めていることである. 神経素子のゆらぎの大きさにもよるが,シミュレーションでは9対9通信が可能であることを示せた.一方,培養神経回路網におけるwet実験では2対2通信が可能であることを示せている. 現在は培養神経回路網におけるwet実験で3対3通信が可能であることを目標に実験を進めているところである. 神経回路網における多重通信機能を本格的に取り上げた研究は他になく,またそれをシミュレーションと培養神経回路網におけるwet実験で検証をとりながら進めている研究も数少なく,仮説と現実のバランスの取れた研究であると思っている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究におけるシミュレーションでは、生体実験では出来ないより詳細な解析することが可能である。現在、我々の研究グループの別のメンバーが、主に培養神経細胞による生体ニューロンの実験を行っている。今後は、この生体実験の結果とシミュレーションの結果を比較することで、生体実験の結果をシミュレーションプログラムにフィードバックさせ、パラメータ等の修正を行う。これにより、脳の細胞間同士の繋がりが把握し、生体の知的な生体制御システムの構成の解明、脳における記憶、連想などのモデルを作成を試みる。
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Causes of Carryover |
平成30年度は最終年度であり,成果の海外発表で経費増が予想されるため,若干ではあるが繰り延べとした.
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