2017 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム生体イメージングによる網羅的な細胞動態の解析
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16K12525
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50183950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂人 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞イメージング解析 / 細胞動態 / 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.生体イメージングデータからの炎症状態での細胞動態の解析 細胞の動きを検出する方法として、オプティカルフローに基づく手法を用いることで、異なる刺激を与えたときの免疫細胞の遊走の変化を解析した。イメージングのデータとしては、感染性炎症とアレルギー性炎症の2種類の炎症を誘導する刺激剤を加えたマウスの皮下組織を、二光子励起顕微鏡で経時的に観察した動画像データを使用した。前年度までに行ってきた、細胞の移動度を表す速度ベクトルだけでなく、連続的な時間変化における速度ベクトルを連結した細胞移動の軌跡を求めることで、細胞の移動度と移動方向を検出できるようにした。この結果、これら2種類の炎症において免疫細胞の動態が大きく異なるという知見が得られた。 2.細胞集団の混合度を表す指標の考案と細胞間相互作用予測への応用 生体組織中で種類の異なる複数の細胞の空間的な配置をもとに、異なる種類の細胞間での相互作用の量を予測する手法を開発した。従来は、生体組織の画像からの細胞の空間配置の解析においては共局在を扱うものが多かった。異なる種類の細胞群の相対的な配置は相互作用の情報を含んでおり、すなわち群間で相互作用する必要がある場合は空間的な分布にも相関がみられると考えられる。このような相互作用の量を詳細に定量化するには、単なる共局在に加えて各細胞群が排他的に形成している集団間での混じり具合を評価する必要がある。そこで本研究では、細胞集団の混じり具合と、排他的な集団形成の度合いを定量化する指標としてCMI(cell mixture index)を考案した。実際にCMIを用いて、骨組織中の破骨細胞と骨芽細胞の混合度を解析した結果、骨芽細胞と接触している破骨細胞では、接触していない破骨細胞と比較して、骨を溶かす機能が低いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発したオプティカルフローによる免疫細胞の動態解析により、炎症の種類の違いが免疫細胞の動態に影響しており、動態解析によって炎症の種類や進行度を予測できる可能性が示された。また、生体組織中での種類の異なる細胞群の空間配置の解析法の一つとして、複数の細胞群の配置の混合度を定量化する指標を考案することで、画像から細胞間の相互作用の量的な予測を行う手法を開発し、細胞間相互作用により細胞の機能が影響を受けることを示すことができた。以上のことから、研究期間の延長があるものの、順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
刺激により誘導される炎症の種類や誘導後の時間等の条件を増やして、炎症の種類や進行度と細胞動態との関係を時間的な側面からさらに解析を進めるとともに、異なる細胞集団中の細胞間相互作用を、細胞の配置関係という空間的な側面からさらに解析していく。また、両者を組み合わせることで、時間的な解析と空間的な解析の統合を目指す。
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Causes of Carryover |
【理由】研究対象としている、炎症発症時のマウス免疫細胞の動態について、これまで解析してきた感染性炎症に加えて、アレルギー性炎症での顕微鏡観察画像データも別途取得できたが、これら2種類の炎症において免疫細胞の動態が大きく異なるという当初想定できなかった知見が得られ、新たな画像解析と数理モデルの構築が必要となった。これらを実施し、その研究成果を論文投稿や学会等で発表するために期間を延長する必要が生じた。 【使用計画】新たな観察画像データの大幅な拡大にともなうストレージ装置や、解析対象の大規模化に伴う計算資源の拡充に必要な物品費および計算機使用料に加えて、ソフトウェア開発に必要な計算機消耗品等や、研究成果の発表のための論文校閲費や旅費と会議参加費等の経費として使用する。
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Research Products
(6 results)