2016 Fiscal Year Research-status Report
センサ協調による廃棄物系バイオマス還元物流の適応的モーダルシフト
Project/Area Number |
16K12537
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 幸代 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (10372575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和嶋 隆昌 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00380808)
矢入 郁子 上智大学, 理工学部, 准教授 (10358880)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 還元物流 / バイオマス燃料 / 食品廃棄物 / モーダルシフト / 多目的最適化 / センサーネットワーク / スマートゴミ箱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,廃棄物系バイオマスを活用するための過程には,リサイクル技術の向上だけでなく,発生から利用まで一連の施設をつなぐ還元物流の最適化が重要であることに着目している.3年間の計画は,大きく3つに分けて進めることとした.1)食品廃棄物の水分量減少技術,2)回収最適化に向けたをセンサー付きゴミ箱,3)回収経路の最適化方法,それぞれ開発する. 1)については,45%程度の水分を含む食品廃棄物の水分量を減少させる方法として,放置しただけの場合,ゴミ箱等にファンなどの乾燥装置をつけた場合における水分量の減少過程を調査した.放置する場合は,その場所が天気に影響を受けることを考慮しなければならず,その場所の確保が必要となること,またファンなどの乾燥装置を付けた場合でも,次々に投下されるゴミの影響を考慮しなければならない点を考察した. 2)については,フィンランドで普及している太陽光によるセンサー付きゴミ箱等,センサー付きの「スマートゴミ箱」の事例を収集した.まずはフィンランドのスマートゴミ箱のネットワークを参照し,本課題で制作する予定の「重量センサー」,および,そのセンサーネットワークの仕様策定を開始する.3)については,重量センサー付きのスマートゴミ箱の仕様を前提に,ゴミが時々刻々と投下される状況を想定し,ゴミの増加量と水分減少量の変化を考慮した巡回頻度を決定するシミュレーションを実施し,さらに,これら(スマートゴミ箱の設置場所)が複数の場合の最適巡回経路を学習するアルゴリズムに関する既存研究を調査した.その結果,時々刻々と変化する重量に対して最適な回収時期の決定問題,および,これらを考慮した複数箇所の巡回アルゴリズムは存在せず,現状では,Q-routingという強化学習をベースにしたアルゴリズムの拡張することを前提とした問題の定式化を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
廃棄物系バイオマスのエネルギー利用については,そのリサイクル技術を実用化へとつなぐロジスティクス実現に向けた提案はない.その理由として,廃棄物系バイオマスに関して,廃棄後の分別,エネルギー化における地方施設の処理能力.など,バイオマス利用に至るまでの過程で,外部不経済の可能性が指摘されることや,人のモラルなど,数理的なモデルの外の話など,具体的な問題が見えにくい.したがってH.28年度は,1) 食品廃棄物の廃棄状況,水分処理方法,2) ゴミ回収に特化したセンサーデバイスの調査,利用状況(設置場所,回収形態)を考慮したセンサーネットワークの仕様策定,および,3) 分散人工知能によるセンサーネットワークに要請される協調アルゴリズム,および,定式化された既存の最適巡回経路問題との相違の洗い出しを実施した.主として,技術の実現につながる課題を明確にするための調査が中心であり,1)食品廃棄物の水分量減少技術の既存法調査,2)については,幕張メッセやハウステンボスで進められている特区の状況を前提とした回収最適化に適したセンサー付きゴミ箱のセンサー部分の仕様を策定した.また,3)については,食品廃棄物の発生箇所,発生頻度,発生量に関するデータを収集した.また,これに基づいて,重量センサー付きのスマートゴミ箱の仕様を前提に,ゴミが時々刻々と投下される状況を想定し,ゴミの増加量と水分減少量の変化を考慮した巡回頻度を決定するシミュレーションプログラムを実装した.この結果,水分量の減少を最大化すること,および,各ゴミ箱の重量を考慮した巡回頻度の最小化は多目的最適化問題として考える必要があることを示すことができた.さらに,既存の巡回経路アルゴリズムでは解けないことを示し,巡回ノードが動的に変化することを前提としたルーティングアルゴリズムの必要性を指摘しており,進捗はおおむね順調と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
H.28年度は主な成果は,食品廃棄物に関する調査や,世界各国で展開されている「スマートゴミ箱」の形態とその背景の考察である.また,モーダルシフトを検討する上で,まずは自治体内での回収巡回最適化問題として妥当な定式化を検討した.自治体ごとに異なるリサイクル施設の数,処理能力,規模の違いは,どの範囲で回収計画を立てるのかという問題,また,廃棄物発生の時期,量の不確実性など不確定要素が多く,また,食品リサイクル法などの法的側面からの制約がある問題であることからあらためて挑戦的な課題であることを認識した.しかし,H.28年度の調査を踏まえてH.29年度は,複雑な問題を整理し,現実的かつ解決可能な定式化と実験を計画する.H.30年度は,1) 食品廃棄物をバイオマス化する上で含水率上限に関する実験,2)スマートゴミ箱における重量センサーの試作と,ゴミ箱の仕様確定を行い,その評価および,3) H.28年度に収集した食品廃棄物の発生箇所,発生頻度,発生量に関するデータに基づいて,ゴミが時々刻々と投下される状況における,「ゴミの増加量」と「水分減少量」の変化によるゴミ箱全体の重量変動の数理モデルを示す.さらに,このゴミ箱重量変動モデルに基づいた最適巡回回収問題を定式化までを目指す.はじめに,ゴミ箱重量変動モデルを実装し,これに基づいた最適回収頻度や経路を決定するアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムが完成すれば,人工知能における機械学習,特に強化学習において画期的な提案となる.すなわち,水分量の減少を最大化すること,および,各ゴミ箱の重量を考慮した巡回頻度の最小化は多目的最適化問題として考える必要があり,現状でこの種の多目的最適化問題は,パレート最適性を保証する解を網羅的に探索する解法が存在していないため,本課題を通じて理論的,かつ実証的な実験を示すことは以後の大きな課題のひとつである.
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