2016 Fiscal Year Research-status Report
日本の洋式製本の技術伝播に関する歴史的研究 : 洋装本資料保存のための基盤整備
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16K12543
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森脇 優紀 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任助教 (90733460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
床井 啓太郎 一橋大学, 社会科学古典資料センター, 助手 (20508650)
安形 麻理 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70433729)
福田 名津子 一橋大学, 附属図書館, 助手 (30456305) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 資料保存 / 製本技術史 / 洋式製本 / ステーショナリー・バインディング / レタープレス・バインディング / 帳簿製本 / 西洋古典 / 書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本に導入された洋式製本のうち、その始まりの一つと考えられる帳簿の製本(ステーショナリー・バインディング)技術に着目して、現物資料による製本構造の調査を進めた。調査にあたっては、帳簿製本の技術が移入された当時の明治期の帳簿を所蔵する各機関を訪問した。 平成28年6月22日、東京造幣博物館を訪問した。対象資料は展示中につき、ショーケースの外側から観察し、写真撮影を行った。7月11日、日本銀行貨幣博物館にて、同館所蔵の「九号一円発行紙幣記入帳」1点について、製本構造、料紙について詳細な調査・測定・写真撮影を行った。10月21日~22日にかけては、小樽市総合博物館にて、同館所蔵の住吉屋西川家洋式帳簿30点余を対象とし、製本構造、料紙、保存状況について詳細な調査・測定・写真撮影を行った。平成29年3月22日、一橋大学附属図書館にて、日本郵船株式会社会計帳簿類のうち3点を対象とし、製本構造、料紙、保存状況について詳細な調査・測定・写真撮影を行った。 また本年度は、いわゆる洋書(「読むための本」)の製本(レタープレス・バインディング)技術の変遷を知るべく、製本技術に伝統と歴史を有し、かつ資料保存の分野で世界的に大きな影響を与えているイタリアにて、11月3日から14日の日程で、訪問実態調査を行った。調査にあたっては、Societa Geografica Italiana, Biblioteca Nazionale Centrale di Roma, Laboratorio di Restauro(Bibliotaca Nazionale Centrale di Firenze), Bibliotaca Nazionale Marcianaを訪問し、現地の図書館職員および修復の専門家から、製本構造様式の変遷、洋古書の修復に関する情報を得た。 研究集会は、計2回実施し、各訪問調査で得られた情報の共有・整理を行った。また、年度の終わりには、公開研究会を開催し、海外出張で得られた情報について、研究者のみならず、図書館員と一般にも広く還元する機会を設けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各機関への訪問調査を通じて、明治期に導入された帳簿製本の特徴を把握することがでた。これにより、日本国内での帳簿の生産開始の時期について、ある程度推定することが可能となり、帳簿製本という側面から、洋式製本が日本的に変容していく経緯やその特徴に関する基礎的データを得ることができ、今後の調査の基盤構築につなげられたため。 本年度は、現在の資料保存・文化財保存の考え方の原点である、1966年のフィレンツェにおけるアルノ川洪水から50年の節目である。この時期に、イタリアを訪問し、イタリアにおける50年間の資料保存や製本技術および修復技術の蓄積を実際に現地で確認できたことで、今後の国内調査のための有用な知識・情報を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、引き続き帳簿の製本構造調査を進める一方で、東京大学経済学図書館および一橋大学社会科学古典資料センターが所蔵する稀覯書について、大正期や第二次世界大戦後に施された修復の記録や発注台帳と対照しながら、いつ、誰によって製本・修復されたのか、また装丁の素材や色、綴じ、修理方法、製本構造についての調査・分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画では、アルバイトを雇用し、東京大学経済学図書館と一橋大学社会科学古典資料センターにて、製本構造調査を実施する予定であったが、国内外他機関における調査を優先し計画を入れ替え、次年度にアルバイトを雇用しての製本構造調査を持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、次年度に持ち越した調査用の物品費と人件費に充当する。
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Research Products
(7 results)