2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の洋式製本の技術伝播に関する歴史的研究 : 洋装本資料保存のための基盤整備
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16K12543
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森脇 優紀 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任助教 (90733460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
床井 啓太郎 一橋大学, 社会科学古典資料センター, 助手 (20508650) [Withdrawn]
安形 麻理 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (70433729)
福田 名津子 一橋大学, 附属図書館, 助手 (30456305) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 製本技術史 / 洋式製本 / ステーショナリー・バインディング / レタープレス・バインディング / 資料保存 / 帳簿製本 / 西洋古典 / 書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、日本に導入された洋式製本のうち、その始まりの一つとされる帳簿製本(ステーショナリー・バインディング)技術について、前年度に引き続き、現物資料による製本構造の調査を行った。調査は、平成29年6月末に小樽市総合博物館にて、住吉屋西川家洋式帳簿約20点を対象とし、製本構造、特に綴じや折丁について精査した上で、写真撮影を行った。 また本年度は、洋式製本に関する技術およびその歴史に関して聞き取り調査を実施した。平成29年5月には、帳簿製本の技法に造詣の深い製本家宅を訪問し、帳簿製本の特徴や帳簿製本の職人・技術の系譜に関して、平成29年8月には、明治初期の洋式製本に関して業績のある研究者にインタビューをし、印刷局における洋式製本の技術の伝播と受容に関して教示を得た。 さらに、書籍の修復技術者から、帳簿製本といわゆる洋書の製本(レタープレス・バインディング)の技術について、直接示唆を受けた。平成29年10月株式会社資料保存器材にて、両製本についてそれぞれ、綴じ・背ごしらえ・表紙と本体の接合の実際を会得すべく実験を行い、本の解体を通じて、非破壊調査では得られることができない多くの情報を得た。 一橋大学社会科学古典資料センターが所蔵する稀覯書の製本構造調査については、平成29年8月から9月にかけてアルバイトを雇用して実施した。 研究集会は、計2回実施し、訪問調査で得られた情報の共有・整理や、一橋大学での製本構造調査にあたっての調査方法と調査項目について決定をした。また、平成29年6月には、ニコラス・フィリップスン氏講演会“Adam Smith in Context : A Historian's Reflections”に、同年7月には、公開講演会「アダム・スミス文庫と書誌学・文献学、そしてデジタル・ニューマニティーズ」を共催し、海外研究者との情報交換につとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
訪問調査では、昨年度の調査と今年度の聞き取り調査で得られた帳簿製本の特徴に関する情報をふまえられたことで、昨年以上に調査ポイントが明確となり、より詳細な調査が実施できたため。聞き取り調査では、日本における洋式製本技術者の系譜に関する有益な情報を得ることができたため。また製本技術者からの専門的な技術・知識を通して、実際に技術的な側面を体験したことは、洋書の製本構造理解を深めるものとなったため。 一橋大学社会科学古典資料センターが所蔵する稀覯本のうち、日本で修復が施されたものの製本構造の調査では、現物資料とそれらの修復記録を照合させて、いつ・誰によって製本・修理されたのかを整理・分類し、それぞれの装丁の素材や色、綴じ、修理方法、製本構造について調査・分析をした。これにより、各製本者による技術的特徴に違いがあることが分かり、日本における洋式製本技術の系譜の理解につながる重要な情報を集積することができたため。 以上、今年度の訪問調査、聞き取り調査および現物資料へのアクセスによって、洋式製本の構造そのものや技術の系譜等、日本に導入された洋式製本について総合的な観点から研究を深めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、東京大学経済学図書館が所蔵する稀覯書について、大正期や第二次世界大戦後に施された修復の記録や発注台帳と対照しながら、いつ・誰によって製本・修復されたのか、また装丁の素材や色・綴じ、修理方法、製本構造についての調査・分析を行う。特に、東京大学経済学図書館においては、昭和30年代の洋書の機構書の修復記録が残されているため、これらの記録の精査および文献学的研究を併せて実施する。 また、追加で帳簿製本や初期の洋式製本を所蔵する機関に照会および調査を行い、前年度までに得られた情報と比較・検討することで、研究データの精度を高める。
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Causes of Carryover |
(理由)当初計画では、東京大学経済学図書館と一橋大学社会科学古典資料センターが所蔵する稀覯書について、アルバイトを雇用して製本構造調査を実施する予定であったが、研究分担者の転出に伴い、一橋大学社会科学古典資料センターでの調査と洋式製本技術の系譜に関する聞き取り調査を優先したため。 (使用計画)東京大学における製本構造調査および、関連する他機関での調査に伴う物品費・旅費・人件費等に使用する。
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Remarks |
JSTさくらサイエンス交流事業“Providing Technical Support of Constructing and Maintaining Academic Information Infrastructure to Libraries in Local Provinces, Malaysia”の「貴重史資料修復・保存」講義及び実務研修講師(京都大学東南アジア地域研究研究所、2017)
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Research Products
(6 results)