2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12550
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西出 哲人 兵庫県立大学, 会計研究科, 教授 (60264834)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大衆規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の大衆社会に暗黙的に流布している規範の明示方法を創出することである。平成28年度は、データとなる4コマ漫画の利用環境を整備した。まず、利用を希望する4コマ漫画について、単行本の調達を試みた。その結果、一部のものについては、すでに絶版で、調達が難しいことがわかった。そのような状況下で、分析対象の選択を試みた。そして、希望する全ての作品が調達可能な、2008年に出版されたものをデータとして利用することにした。 次に、4コマ漫画の研究への利用許諾を検討した。本研究では、①スキャナーで読み込みデータベースを作成する、②アンケートを実施する際に被験者に見せる、③成果の公表時に引用するなどで、4コマ漫画を利用する予定である。これらの利用方法については、著作権者の利用許諾が必要と考えた。まず、有識者に対応方法に関する意見を求めた。そして、①と②の利用方法については、申し入れが妥当との見解を得た。また、万が一、データが流出した場合に備えておくように助言を得た。これを受け、①②の利用方法について、著作権者に作品利用の申し入れを試みた。その結果、3作品については①②の利用に関する申し入れができた。そして、申し入れが叶った3作品について、次年度以降分析を進めることにした。また、③の利用方法については、先方との相談の上、具体的な引用方法が決まってから、改めて許諾を申請することになった。 データの整備と並行して、大衆規範を明示するための作業のドライランを行なった。具体的には、いくつかの4コマ漫画の作品から大衆規範と思われる事項を直感的に書き出し、大衆規範に関する具体的なイメージの形成を試みた。その結果、大衆規範の明示のために、登場人物の反応に関する二項関係に注目できることがわかった。また、作業を階層的に整理できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、主に、研究全体の準備を行う予定だった。これには、4コマ漫画の単行本の調達と、それらを研究に利用する許諾についての作業が含まれる。まず、単行本の調達に関しては、すでに絶版されているものがあり、全ての作品を調達することができないことが判明した。そして、この問題への対応方法を検討するのに時間がかかってしまった。電子書籍の利用なども検討したが、最終的に、分析対象を絞り込むことで対応することにした。 つぎに、4コマ漫画の利用許諾に関する作業についても、やや遅れが生じた。4コマ漫画を研究に利用するためには、関連する法に配慮する必要がある。そこで、著作権の有識者の意見を求めた。そして、有識者から得られた助言に従い、4コマ漫画の研究利用について、研究代表者が直接出版社に申し入れを試みた。その際、申し入れの準備ために時間がかかってしまった。また、いくつかの作品については、未だ著作権者の意向を伺えていない。そこで、申し入れが叶った3作品について研究を進めていくことにより、これ以上の遅れを回避することにした。 さらに、本研究では、大衆規範を明示する作業を支援するデータベースシステムの構築を目指している。そして、平成28年度は、このシステムの要件定義を進めることを想定していた。しかし、支援対象となる作業が想定以上に複雑であったため、システムの要件定義が進んでいない。また、本研究では、Pythonのライブラリやフレームワークを利用することを予定しているが、現時点で判明している要件を満たすためには、工夫が必要なことがわかった。したがって、データベースシステムの構築についても、今後、遅れを取り戻す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、主に、データとして利用する4コマ漫画の整理と、大衆規範の明示手順の検討を行う。検討の対象は、平成28年度の活動の結果をうけ、2008年に新聞朝刊紙に掲載された4コマ漫画3作品に絞る。 具体的には、4コマ漫画を管理するためのデータベースシステムの作成を試みる。このデータベースシステムでは、対象となる4コマ漫画のプロファイルと、大衆規範を明示するための手順を管理する。プロファイルには、描かれている内容の属性について、1話ごとに記録してゆく。記録される属性には、「場面」、「登場人物」、「表現されている感情」などを想定している。手順の管理では、想定される手順を階層的に整理し、事例に応じた具体的な判断方法を記録してゆく。 データベースシステムの作成では、まず、データの整理を試みる。そして、プロトタイプの作成を試みる。データの整理については、対象となる作品について、1話ごとにIDを割り振り、プロファイルの原型を作成する。これらの整理作業には、研究補助者を活用する。次に、少数のサンプルを利用して、大衆規範の明示作業を検討する。作業は3つの段階に分けて検討する。最初の段階では、形式的な表現方法による分類を試みる。次に、分類されたカテゴリごとに、大衆規範の表現箇所を求める。最後の段階では大衆規範の記録方法を検討する。作業の検討結果をうけ、データベースシステムの要件を策定し、プロトタイプを作成する。データベースシステムで利用するライブラリやRDBMSの選択については現在未定である。ライブラリ等の検討のために、複数のプロトタイプを作成する可能性がある。これによる作業の遅延が、平成29年度の進行におけるリスクの一つである。将来的には、平成29年度に構築予定のプロトタイプを改善することにより、漸近的に大衆規範の明示方法を洗練化する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度予算に残高が生じた理由は、①法律的な対応に関する費用が、現段階では必要なかったことと、②進行が遅れてデータ整理にまで至らなかったことにある。まず、法律的な対応については、4コマ漫画の利用許諾が事前の不確実要因だった。そのため。専門家への相談費用に予算を計上していたが、現段階では無料で相談に応じてもらえた。また、許諾申請の手続きについても、専門的知識が必要となる可能性があったため、代理人費用を予算計上していた。しかし、現段階では研究代表者が行える範囲内であった。次に、本研究では、データ整理の補助作業に予算を計上している。データの整理方法は、利用方法の許諾内容に依存する。そのため、データ整理は利用許諾を受けるまで実行できなかった。しかし、利用許諾に関する作業時間が長引いたため、平成28年度中にデータの整理作業にまで至ることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の活動から、法律的な判断が必要な内容は、研究の進行の観点から2つに分けられることがわかった。そして、研究が進み、具体化しなければ判断できない内容については、その段階で専門家に照会することにした。事後の判断が必要な事柄には、研究結果の公表方法に関する法律的判断や、預かったデータが事故により流出した場合の法律的判断が含まれる。法律的な対応に関する予算は、研究が予想を上回って進捗した場合には、平成29年度に執行する可能性がある。そこで、未執行の金額を平成29年度に繰り越して計上した。ただし、進捗の具合によっては、平成30年度まで繰り越される可能性がある。またデータ整理のための予算は、利用許諾の獲得に関する活動を打ち切ったことにより、平成29年度から本格的に開始する。データ整理に関する予算の未執行分も、平成29年度に繰り越して計上した。
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