2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12550
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西出 哲人 兵庫県立大学, 会計研究科, 教授 (60264834)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大衆規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の大衆社会に暗黙的に流布している規範の明示方法を創出することである。そして、新聞や雑誌に掲載されている4コマ漫画に注目し、そこから大衆規範を明示することを試みている。 平成29年度は、素材として利用する4コマ漫画の整理と、大衆規範の明示手順の検討を行った。整理としては、利用許諾が得られた4コマ漫画の作品をデータ化した。そしてIDを割り振り、管理可能な状況にした。大衆規範の明示方法の検討については、いくつかの作品に関して、試験的に4コマ漫画のプロファイルの作成を試みた。プロファイルとは、1話ごとに描かれている情報の記録である。その結果、4コマ漫画に描かれている情報は当初想定していたものよりも膨大なことがわかった。そこで、効果的に作品に描かれている情報を抽出・記録する方法について検討した。そのために、抽出する対象の絞り込みを試みた。まず、プロファイルの作成を2段階で行った。つまり、全ての作品についてプロファイルの作成を試みるのではなく、特定の出来事が描かれている作成を選択し、その作品についてのみプロファイルの作成を試みた。選別のために注目した出来事は、研究の目的を鑑み、他者への依頼・命令とした。そして、依頼・命令に関連する情報について抽出し、記録することにした。これらの絞り込みにより、ある程度、作業量を軽減することが可能となった。 データベースシステムの作成に関しては、基本機能の作成に終わった。具体的には、画像を表示し、そこに描かれている属性を選択肢から選べる仕組みを作成した。データベースシステムは、CentOS7上で、pythonのフレームワークのDjangoを利用して作成した。データベースはMariaDBを利用した。今後、この仕組みを4コマ漫画の整理に利用できるように更新してゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況に関してはやや遅れが目立つ。平成29年度には、4コマ漫画のプロファイル作成作業を定型化し、作業分担者に役割分担できる体制を整える予定であった。しかし、作業の定型化にまでは至らず、研究の進捗は少なかった。 その主な原因は、4コマ漫画に、想定していた以上の情報が描かれていることが判明したことによる。当初、全作品の全コマに関して、描かれている情報の記録を試みた。その結果、作業量が膨大になったと同時に、得られた記録に一貫性がなくなった。そのため、情報の記録作業を一旦中止し、対策を講じることにした。この問題に対処するには、研究目的から再検討する必要があり、多くのエフォートが割かれた。現在、作品の選別により、この問題を回避することが試みられている。しかし、解決方法になるかは不明で、再検討については今後もしばらく続くと予想されている。大衆規範の明示手順については、当初の予定では、実際のデータによるプロファイルの作成まで考えていたので、遅れていると評価できる。 作業を支援するデータベースシステムの作成に関しても、基本機能の作成に終わった。このシステムでは、まだ4コマ漫画のプロファイルの作成に活用できない。当初の予定では、プロトタイプの作成まで考えていたので、遅れていると評価される。この遅れの原因は、要求定義と外部設計がまとまらなかったことに由来する。本来、テストデータを利用したマニュアルでの試行結果を受けて、その作業を支援する情報システムの構築に至るべきだったが、試行の作業が遅延したことから、情報システムの用件定義までに至らなかった。また、OSやフレームワークの選択に関する判断にも時間がかかった。さらに、勤務の理由により、研究に利用できるエフォートが十分とれなかったことも、遅れの原因の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、作品のプロファイルを作成のための手順を一つ確立し、その作業を支援するプロトタイプシステムの作成とスパイラルアップを試みる。プロファイル作成のための手順は、2段階で行うことを継続する。現在、1段階目で、依頼・命令が描かれている作品の選別を考えているが、今後の動向によっては、その他の行為が描かれている作品についても対象とする。そして、2段階目で、作品に描かれている情報について記録を試みる。情報の記録に関しては、平成29年度の活動により、4コマ漫画に描かれている情報は当初想定していたものよりも膨大なことがわかった。したがって、どの情報を記録するかについて、選別を行う予定である。ただし、情報量が膨大ということは、4コマ漫画が多くの情報を凝縮して保持していることを意味しており、記録媒体としての4コマ漫画の潜在能力を示している。そこで、情報の記録方法についても4コマ漫画から学べないかを検討する。 作業を支援するためのプロトタイプシステムの作成では、CentOS7上で、フレームワークのDjangoを利用してデータベースシステムを作成する。データベースはMariaDBを利用する。支援システムでは、作業員がブラウザ上で4コマ漫画に描かれている情報を記録できる仕組みを提供することが目標である。また、この支援システムはスパイラルアップを前提としている。したがって、スパイラルアップを支援する仕組みを盛り込むことも視野にいれる。 支援システムの利用とスパイラルアップを通じて、本研究の目的である大衆規範の明示方法について検討する。この作業は、解釈を伴うので、作業員への指示と作業結果の関係にも注目する。一連の作業から得られたプロファイルと大衆規範から、大衆規範の活用方法や、大衆規範が活性化するための条件についても考察する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の利用実績から、次年度使用額が生じた理由には3つある。まず、平成28年度の活動において、4コマ漫画の利用許諾に関する費用の必要がなかったことがあげられる。これにより、平成29年度にまとまった金額が繰り越された。つぎに、平成29年度の活動で、4コマ漫画の電子化および整理のための人件費が安価で済んだことがあげられる。これは、作業を依頼した学生の能力が偶然高く、多くの作業を自動化し、短時間で作業を完了できたことによる。人件費は時給であることから、結果的に執行額が抑えられた。3つめの理由は、研究の進捗が、当初の予定より遅れていることがあげられる。そのため、人件費が必要な作業までたどり着けなかった。 平成30年度は、まず、当初から予定していた作業の人件費に予算を利用する予定である。この予算を利用して、作業員に4コマ漫画の仕分けを依頼する予定である。また、平成29年度の活動から、本研究に関連する情報環境の整備や資料の整理のために、物品等が必要なことが判明した。そして、研究を進める上で、図書等が必要なことも判明した。特に、社会学関連の資料が不足していることがわかった。平成28年度から繰り越された予算については、これらの必要項目にも振り替えて執行する予定である。
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