2017 Fiscal Year Research-status Report
分散PDSの応用研究:個人を軸にした社会的なシステムへの移行に向けて
Project/Area Number |
16K12551
|
Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
加藤 綾子 文教大学, 情報学部, 講師 (10597941)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | パーソナルデータ / PDS / GDPR / 金融 / PSD2 / データポータビリティ / 個人中心 / サービスイノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,複数の事業者に散在していた個人のデータを個人本人のもとに集約し,かつ,個人本人が自らのデータの開示対象や開示範囲をコントロールするという,分散PDSの考え方に基づいている.本研究の目的は,このようなデータコントロールの在り方が,個人中心の社会・経済の構造を形成していくのではないか,ということを整理して説明することである. 2年目に当たる本年度は,昨年度に引き続き,複数の国際会議や産学の会議に参加し情報収集や意見交換を行いながら研究を進めた.金融分野は,法制面・技術面の条件が整いつつあることで,個人本人の同意に基づくパーソナルデータの流通が一部で実現しつつある.そこで,本研究は,EUの一般データ保護規則(GDPR)はもとより,改正決済サービス指令(PSD2),日本の改正銀行法,資金決済法などの法制度を確認し,金融分野で進むデータポータビリティについて把握した.そして,3つの異なる分野の議論,すなわち,(1) 個人情報保護やプライバシーの議論,(2) 金融分野における決済サービス高度化や銀行API公開の議論,(3) 消費関連データから経済指標を作成するという国家統計の議論が,個人に紐づくデータの利活用という観点で捉えると,新たな社会・経済の構造の形成に寄与する一連の動きとして整理され得るのではないかと考察した. 本年度の研究成果報告は,ICServ2017,情報処理学会DPS・SPT・EIP合同研究発表会,サービス学会大会,進化経済学会大会で行った.また,2018年3月時点で,投稿論文を執筆中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,個人主導のデータ流通およびそれによる構造変化の可能性について,特に金融分野で進むデータポータビリティによるサービスイノベーションという切り口で,ある程度整理して示すことができた.また,本年度の前半においては問題意識を共有する産学の有志メンバーと共に「MyData Japan 2017」というシンポジウムを企画・実施し,本年度の後半においては経済産業省・総務省合同の「データポータビリティに関する調査・検討会」に委員として参加することで,本研究で獲得した知見を僅かながらも社会に還元することができた.さらに,本年度の研究活動を通じて,他の研究者らとの新たな連携や今後の研究の発展につながる足がかりを得ることができた.これらのことから,本研究プロジェクトは順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの最終年度となる次年度は,国内外で進むデータに関する個人の権利強化の動向を引き続き調査するとともに,研究成果の取りまとめ,論文執筆,および研究成果の公開に努める. パーソナルデータの利活用や流通には,(1) n=1の各個人に根差したディープデータに基づくサービスの生成・提供,(2) n=多数のデータの分析による統計的知見の導出,という2つの側面がある.また,事業者によって保有されているデータを個人本人に還元していこうとする政策には,(a) 競争の促進,(b) 市民の自己決定の促進,という少なくとも2つの目的があると考えられる. 2018年5月のGDPR適用開始およびそれに対応・追随する各国の法整備により,データポータビリティはいずれ所与のものとなるとして,今後,具体的には,個人経由で移転されたデータを事業者がいかに利活用して新サービス創出や業務効率化などを行うことができるかが重要な課題となる.個人においては,自らのデータを元に,他者のデータとの差分の比較などを通じて,いかに自己を知り,選択し,自己決定をしていくかということが重要な課題になると考えられる.今後はこのような次なる研究課題の検討に向けた論点整理も行いたい.
|
Research Products
(4 results)