2016 Fiscal Year Research-status Report
思考実験型モデリング学習環境の支援機能拡充と学習効果測定法の開発
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16K12558
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀口 知也 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00294257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平嶋 宗 広島大学, 工学研究院, 教授 (10238355)
東本 崇仁 東京工芸大学, 工学部, 助教 (10508435)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モデリング学習環境 / アクティブヘルプ / 説明生成 / 知的学習支援 / 定性推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
モデリング学習環境において,特にモデル作成の初期段階における行き詰まりを支援するための「アクティブヘルプ」システムを実装・評価した.行き詰まり原因の多くがモデル部品の数学的・物理的意味や対象系の構造の不理解にあるものの,モデリング課題の文脈から独立した一般的な説明では効果が低いとの知見(予備実験による)に基づき,同システムは課題の文脈を考慮した説明を提供する.説明生成の方式は,これまでに蓄積されたログテータを分析し,課題やモデルの作成段階毎に必要となる説明内容を抽出・整理してルールベース化することで,学習者の状態を推定し適切な助言を与えるというものである.例えば,二つの変量間の比例関係の説明においては,単に数学的な説明ではなく,「タンクの水量が増える(減る)と,底部の圧力も増加(減少)します」等,課題に応じた説明が提供される.平成28年度の前半に機能設計および実装作業を完了し,動作確認を経た上で,同年度後半に検証実験を実施した.その結果,同システムの支援を得てモデリング学習を行った被験者は,これ以前に実装された支援機能(学習者作成モデルと正解モデルを比較して異なっている部分を指摘する「差異リスト」)を用いた被験者に比べて,モデルに対するより深い理解を獲得することが示された(実際にモデリングを行った系のみならず,そうでない系(転移課題)に関しても一定の効果が見られた).一方で,アクティブヘルプはモデル完成度の改善に関しても一定の効果を示したものの,差異リストには及ばなかった(特に,複雑な課題のモデルをアクティブヘルプのみで完成できる被験者は限られていた).実験の結果,アクティブヘルプと差異リストのそれぞれの効果が明らかとなり,これらを組み合わせて学習支援を行うための基盤的知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標の1つであった,「アクティブヘルプ」システムの設計・実装が滞りなく完了し,動作試験において,当初予定したモデリング課題のすべてにおいて問題なく稼働することを確認した.また,もう1つの目標であった,同支援システムの評価実験を実施し,その有用性を確認すると共に,従来の支援機能と組み合わせた支援を行うための基盤となる知見を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,モデルの誤り顕在化のためのシナリオ変更機能の実装・検証を行う.学習者の作成した(誤った)モデルの振る舞いが定性的には正しい振る舞いと弁別し難くなる場合,シミュレーションや振る舞いの説明が効果を持たないことがある.そのため,シナリオつまり物理的状況を変更することで,モデル中の誤りを振る舞いとして顕在化するという支援を行う.すなわち,これまでに開発・蓄積してきた学習シナリオを再整理し,類似の状況でありながら異なる概念やモデルを必要とするものにグループ化しておくことにより,必要に応じてシナリオを変更してモデルの誤りを顕在化する機能を実装する.類似の状況やモデルを蓄積・検索するための機構は,研究代表者らの先行研究で開発された知識記述の枠組み(マイクロワールドグラフ)を利用する. 平成30年度は,思考実験型学習における学習効果の測定法の開発を目指す.これまでに実施した学習実験では,本環境における活動が学習者の興味や積極性 を大きく促進したことは確認されたが,通常の問題演習では顕著な成績上昇が見られなかった.これは,本環境の学習効果が,ときに解法パターンの暗記等で対処できる通常の演習問題の成績には表れ難い,概念レベルでの理解を促進するものであるからであると考えられる.そこで,前二年度までに得られた学習ログを分析してそのような学習効果を測定する数種類のテストを開発し,試験的利用を通してその妥当性・有用性を検証する.開発に当たっては,教育実践・測定の経験豊富な研究分担者・協力者の協力を得る.
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Causes of Carryover |
研究計画時に申請した予算額に対して交付額が減額されたものであったこと,および研究の進捗状況により,予定していた海外出張1件(海外研究協力者との打ち合わせ)を取りやめたことが主たる要因である.これに代えて,国内研究分担者との打ち合わせを増やしたため,その差額が平成28年度未使用額となっている.(なお,海外研究協力者とはメール等により緊密に連絡している)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度未使用額については,主として平成29年度における外国および国内旅費に充てる予定である.
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Research Products
(5 results)