2018 Fiscal Year Annual Research Report
development of a comprehensive particle tracking system for marine ecosystem and material transport
Project/Area Number |
16K12575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 義正 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70631399)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粒子追跡法 / 非静力学海洋モデル / 分散混相流 / 浮遊堆積物粒子 / ダウンスケールモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は数値海洋モデルに粒子追跡手法を組み込むことにより、海洋物質循環や海洋生態系に関する様々な用途に応用可能なオイラー-ラグランジュ型の包括的海洋モデリングフレームワークを構築することを目的としている。研究最終年度はこれまでに開発したモデルを様々な対象に応用することに取り組んだ。また特に沿岸域プロセスについてモデルの妥当性検証のため、ドローンからの空撮による現場観測も実施した。 海洋中に漂う浮遊堆積物を表現する粒子を投入し、その輸送・除去過程やみかけの海水密度を変化させることによる流動場への影響を陽に表現可能な分散混相流モデルを構築し、直接観測が存在する由良川出水とグリーンランドフィヨルド氷河融解水流出イベントを対象として数値実験をおこなった。それぞれで懸濁物質粒径ごとの輸送/沈降過程がよく表現され、現場観測と比較し得る結果が得られた。ただし本研究対象イベントでは懸濁物質含有量が流動場に影響を与えるほど多くない。今後は懸濁物質の力学的影響が顕著にあらわれるハイパーピクナル流イベントを対象に研究を発展させる予定である。 三陸沖を対象とした高解像度ダウンスケールモデルを構築し、各湾に粒子を配置してその輸送経路を調査したところ、一旦沖側に流された粒子の一部が潮汐およびサブメソスケール渦によって再度接岸し、投入点より南の湾に流入している様子が表現された。これは三陸沿岸湾間で水塊が(主に北から南に向けて)頻繁に交換されていることを意味し、当該海域で重要な水産資源であるアワビ等の卵や幼生も世代間で湾をまたいで交流していることを示唆する。今後はより高精度の流動場を用いて湾間の水交換・水産資源の輸送の実態について研究を発展させる予定である。 開発した数値モデルは本研究の重要な成果物であり、上記の例にとどまらず様々な応用が考えられる。海洋研究コミュニティに広く公開して発展的利用を推進している。
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