2016 Fiscal Year Research-status Report
圧力変動吸着同位体濃縮法による5万年以前の試料の炭素14年代測定
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16K12580
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 浩之 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (00234245)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炭素14年代法 / 加速器質量分析法 / 同位体濃縮 / 圧力変動吸着法 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速器質量分析法による炭素14年代測定法の適用年代域を拡大する1つの方法は、試料に含まれる炭素14を同位体的に濃縮することである。本研究では、従来の提案されている熱拡散同位体法(Kitagawa and van der Plicht,1997, NIM 123, 218-220)の実用化に関わる諸問題を克服するために、圧力変動吸着法(PSA, Pressure Swing absorption method)による同位体濃縮を提案した。今年度(初年度)は、理論的な考察・同位体濃縮過程の理論モデル計算の結果から10~15倍の同位体濃縮が予想される2等式小型PSA装置の設計を行った。その設計にもとづいて、そのプロットタイプの制作を行った。本装置の各種実験の条件を決定するとともに、製作した装置を使い、市販の一酸化炭素ガス(二酸化炭素等の他のガスより同位体濃縮計数が大きいことが理論的に予想される)の同位体濃縮実験を行った。 同位体分別効果についての厳密な検討は次年度以降実施する予定としているが、PSA法を用いれば少なくとも数倍~10倍程度まで炭素14を濃縮することが可能であることが明らかとなった。低バックグランドの加速器質量分析装置を用い、バックグランドの厳密な決定を行えれば、炭素14年代測定法の適用年代域を1万年程度は拡大できることを確認した。 前述の実験と並行して、実試料の年代測定へ応用を念頭に、年代測定対象の有機物試料から一酸化炭素ガスを得る装置の開発を行った。大量の二酸化炭素を一酸化炭素に還元する効率を高める装置の改良が必要である。現在、還元装置の改良に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を達成するためには、①高い同位体濃縮計数が得られる小型PSA装置の開発、②炭素14年代測定を行う試料の前処理の確立(一酸化炭素の生成)、③より高い同位体濃縮計数が得られる装置の開発に向けた理論的な考察・同位体濃縮過程の理論モデルの制作・シミュレーションプログラムの開発を行う必要がある。初年度に計画した③の結果を踏まえた①のプロットタイプの製作は完了している。次年度以降、実際の試料を用いた実験を行うためには、次年度以降②について重点的に実験を行う必要があるが、本課題「圧力変動吸着同位体濃縮法による5万年以前の試料の炭素14年代測定」の実用化が可能な段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)は、「圧力変動吸着同位体濃縮法による5万年以前の試料の炭素14年代測定」を実現する、一連の実験手順の確立を計画している。また、現状では、有機物試料を燃焼して得られる二酸化炭素の一酸化炭素への還元過程に問題が残り、その対策を行う。さらに、理論的に予想と実際の同位体濃縮の程度が一致していない点について詳細な検討を行う。モデル計算に使ったパラメータ等の再検討を行い、試作したプロットタイプの改良を行う。
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Causes of Carryover |
PSAカラム充填剤の価額の変動
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
装置改良のために必要となる消耗品(PSAカラム充填剤)の購入
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Research Products
(2 results)