2016 Fiscal Year Research-status Report
大気エアロゾル粒子中に含有されるラジカルと活性酸素の定量
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16K12582
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
白岩 学 名古屋大学, 環境学研究科, 客員准教授 (40771928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
持田 陸宏 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10333642)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気エアロゾル / 活性酸素 / フリーラジカル / 有機粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒径が2.5μm以下の大気エアロゾル粒子(PM2.5)は、人の健康に大きな影響を及ぼしている。その肺への沈着は、肺胞液内で活性酸素やフリーラジカルを生成し、酸化ストレスを引き起こすことが分かっている。しかし、PM2.5がどのようなラジカルを含有し、また液相内でどの種類の活性酸素をどの位の量を引き起こすかは未解明であるために、PM2.5による健康影響は分子レベルで何が起こった結果なのかよく分かっていない。本研究では、 電子スピン共鳴法を用いて、都市大気で採取したエアロゾル粒子内に含有される安定ラジカル種を電子スピン共鳴法を用いて直接検出・定量した。大気エアロゾル粒子中のラジカル種の定量は極めてユニークな取り組みであり、PM2.5の健康影響の化学的な理解に資する知見が得られた。大気エアロゾル粒子 を、名古屋大学の屋上において カスケードインパクターを用いて粒径毎にフィルターに捕集した。エアロゾル粒子に含有される安定なラジカルを電子スピン共鳴法により検出し、スピンカウンティング法を用いて定量した。名古屋で捕集された大気エアロゾル粒子に安定的に存在するラジカルが検出された。EPRのg-factor値は約2.0023であり、主に不完全燃焼が発生起源であるセミカイノンラジカルである可能性が高い。スピンカウンティング法で定量すると、1μgの粒子あたり、10の11乗個のラジカルを含有することが分かった。この値は、ドイツのマインツで捕集されたエアロゾル粒子とほぼ同じような値であり、中国の北京のエアロゾル粒子に比べると数倍少ない値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成28年の春に名古屋大学で大気エアロゾルの捕集を行った。得られたサンプルを電子スピン共鳴法を用いて分析し、大気エアロゾル粒子中に含有されるラジカルを検出/定量した。現在得られたデータの解析をすすめ、論文化を進めている。これまで当初の研究計画書通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に名古屋で行った観測結果の解析を進める。データをまとめて論文を執筆し、国際学術誌に今年度中に投稿することを目指す。大気エアロゾル粒子 を清浄大気である和歌山の森林においてカスケードインパクターを用いて粒径毎にフィルターに捕集する。溶媒抽出と固相抽出の手法を用いて粒子をフィルターから化学成分毎に分画抽出して、質量分析装置および赤外分光光度計を用いて化学分析する。サイズ毎に捕集されたフィルター上の粒子をEPRで直接測定し、粒子相に安定して存在するラジカル種を定量して粒径依存性を調べ、化学成分の分析の結果と合わせて有機物組成や一次放出/二次生成の別との関係を考察する。最近の研究で、セミキノンといった長寿命ラジカルの寿命は3週間程度であることが報告されており、固相中のラジカルの同定は、採取から遅くとも2週間以内に行うようにする。次に、分画した各溶液を肺胞液に含まれる抗酸化物質(アスコルビン酸)と混合する。この際、粒子と抗酸化物質の相互作用で発生する短寿命で反応性の高い活性酸素を捕捉するために、BMPOやDEMPONといったスピントラップ剤を同時に混合する。捕捉された活性酸素をEPRで検出して定量する。この分析を、分画された有機画分毎に行い、どの化合物群が効率的に肺胞液内で活性酸素を発生しうるのかを調べる。
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Research Products
(1 results)