2016 Fiscal Year Research-status Report
福島原発からウラン燃料は飛散したのか-ウラン236同位体による新たなアプローチ
Project/Area Number |
16K12592
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山田 正俊 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10240037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境分析 / 福島第一発電所事故 / 誘導結合プラズマ質量分析法 / ウランー236 / 同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
・福島第一原子力発電所事故により,放射性物質の大気中への大量放出,高濃度汚染水の海への流出が起こった。ウラン同位体のひとつである236Uは,もともと天然には存在せず,環境中でのウランによる汚染の有無を解明するのに有効な放射性核種である。そこで,本研究では,四重極電場を直列に配置した誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて,環境試料中の236U分析技術の開発を行った。 ・環境試料を硝酸・フッ化水素酸・過塩素酸で分解し,抽出クロマトグラフィレジン(DGAレジン)を用いて1回でウランを分離・精製するという新たな迅速で簡便な分析法を開発した。また,四重極電場を2個直列に配置した誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて,高感度・脱溶媒試料導入システムの導入によるプラズマへのサンプル導入効率を向上と最適測定条件を検討した。 ・これまでの誘導結合プラズマ質量分析法では、238U+のイオンビームのテーリングが236U+イオンにまで影響するとともに、反応ガスを使用しない場合、質量数が同じ236となるウラン水素化物イオン(235UH+)と236U+イオンを分離することができなかった。本研究で用いた装置では,四重極電場をイオン反応セルの前後に直列に配置してあり,235U+イオンはセル内に入らず235U17O+イオンは生成しない。また,235UH+イオンは酸素ガスと反応して235U16O+イオンとなり,測定対象である236U16O+イオンのみが精度よく検出できた。以上,236U濃度及び236U/238U同位体比を測定する方法を開発し,定量することが可能となった。 ・福島第一原子力発電所事故により放射性セシウムなどで汚染された土壌試料の予備的分析を行った。その結果,236U濃度は(2.25-14.1)x10∧-2 mBq/kg,236U/238U同位体比は(1.35-5.66)x10∧-8であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
混酸による試料の分解及び抽出クロマトグラフィレジン(DGAレジン)によるウランの簡易・迅速分析法を開発することができた。また,四重極電場を2個直列に配置した誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて,236U濃度及び236U/238U同位体比を感度よく測定する方法を開発することができた。この方法を用いて,福島第一原子力発電所事故により放射性セシウムなどで汚染された土壌試料中の236U濃度及び236U/238U同位体比の予備的分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
・新たに開発した方法を用いて,採取済みの福島第一原子力発電所事故により放射性セシウムなどで汚染された土壌試料中の236U濃度と同位体比(236U/238U)を測定し,ウラン土壌マップを作成する。さらに,得られた同位体情報を基に,福島原発事故由来のウランの環境への飛散の有無を評価する。 ・四重極電場を2個直列に配置した誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて,環境試料中の129Iの分析法を開発する。 ・福島第一原子力発電所事故により放射性セシウムなどで汚染された土壌試料中の難分析放射性核種(135Cs, 236U, 129I, Pu)の分析を行い,これら核種の汚染の起源と輸送過程を評価する。
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Causes of Carryover |
旅費において,国際会議での発表を次年度に持ち越した。また,物品費において,試薬や理化学機器などの消耗品の一部を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年5月5日から5月8日に中国・海口市で開催されるThe International Congress on Analytical Sciences 2017 (ICAS2017)において,研究代表者と研究協力者が研究成果を発表することが確定しており,この旅費及び参加登録料に使用する。また,研究協力者の人件費の一部及び試薬や理化学機器などの消耗品の購入と研究成果発表のための旅費に使用する。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Plutonium isotopes (239-241)Pu dissolved in Pacific Ocean waters detected by AMS: no effects of the Fukushima Accident observed.2017
Author(s)
Karin Hain, Thomas Faestermann, Leticia Fimiani, Robin Golser, Jose Manuel Gomez-Guzman, Gunther Korschinek, Florian Kortmann, Christoph Lierse von Gostomski, Peter Ludwig, Peter Steier, Hirofumi Tazoe and Masatoshi Yamada
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Journal Title
Environmental Science and Technology
Volume: 51
Pages: 2031-2037
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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