2017 Fiscal Year Research-status Report
In vitro DNA複製系を利用したDNA複製応答性ATR機能解析
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16K12602
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
塩谷 文章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (10627665)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ATR |
Outline of Annual Research Achievements |
正確なDNA複製・遺伝及びゲノム安定性の維持は真核生物におけるに最も重要な生命現象の一つである。DNA複製ストレス応答を最上流で制御するAtaxia telangiectasia and Rad3 related (ATR) はHUやUVなどの外的DNA複製ストレスによって生ずる一本鎖DNA (ssDNA)の露出によって活性化し、細胞の生存を維持する。ATR欠損は胎生致死であることやATR選択的阻害剤は急激なssDNA露出を誘発しreplication catastropheによる細胞死を誘導することからATRは外的損傷のない状況下においてもDNA複製に必須であると考えられている。しかし、DNA複製、および内因性DNA複製ストレス応答に関わる具体的なATRの機能はほとんど説明されていない。今年度はSV40ゲノムDNA複製をAS-ATRとアナログATP-gamma S存在下で行いATR特異的基質を試みたが、DNA複製効率が低いこと、Sulfolinkビーズによる基質回収率が低いことから質量分析に十分なサンプルを得られなかった。そこでDNA複製ストレスを誘発するがん遺伝子(K-ras)を4OHT誘導的に発現する細胞系を構築し、この系を用いて細胞内in vivo DNA複製ストレスの有無(K-ras発現の有無)によるリン酸化基質群を、 TMT(Tandem Mas Tag)法を用いて網羅的比較定量を行った。これらの中にはストレス非存在下において1.5倍以上存在する基質を7種、DNA複製ストレスによって1.5倍以上増加するリン酸化基質(pSQ/TQ)を10種以上認めた。またAS-ATRとアナログATPによるin vitroキナーゼアッセイ産物をphostag gelにて解析し、未知基質のATRによるリン酸化の有無を同定しうるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はin vitroゲノムDNA複製によるATR特異的基質の同定を試みたが、DNA複製効率が低いこと、基質回収率が低いことから質量分析に十分なサンプルを得られなかった。これらのことから研究計画を見直し、細胞内in vivo DNA複製ストレスを対象とすることとした。このためDNA複製ストレスを誘発するがん遺伝子(K-ras)を4OHT誘導的に発現する細胞系の構築に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivo DNA複製ストレス系を確立し、ATR活性化に伴う基質同定を進める。ストレス非存在下DNA複製誘導性リン酸化および内因性DNA複製ストレス誘導性リン酸化群を同定する。これらの結果得られる候補基質のGST融合基質ライブラリーを作成する。これらの基質候補に対してAS-ATRとアナログATPによるin vitroキナーゼアッセイを行い、リン酸化の有無をphostag gelにおける移動度によって判定しATR基質特異性を解析する。ATR特異性が認められた基質のオントロジー解析・pathway解析からストレス非存在下におけるATRの必須機能、及び内因性DNA複製ストレス存在下におけるATR機能解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初in vitro アッセイ系におけるATR活性化、及びそれに伴うATR特異的リン酸化基質の精製後、複数回の質量分析を予定していたが、DNA複製効率及び基質精製時の回収率が低く解析困難なため計画を見直した。検討の結果in vivoにおけるDNA複製ストレス応答を解析するため細胞系の構築が必要となった。これらの事情から質量分析を控えたため支出が減少した。次年度はin vivoにおける核内基質リン酸化プロテオミクスを進める。同定される基質の機能を解析するため、リン酸化抗体を作成、ATR特異的基質リン酸化部位に変異を導入し、変異基質の細胞発現系を作成し、計画した実験を遂行する。
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Research Products
(4 results)