2017 Fiscal Year Annual Research Report
The bio-monitering systems by using acoustic alterations of ultrasonic vocalization of rats
Project/Area Number |
16K12603
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 博美 北海道大学, 文学研究科, 教授 (90191832)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超音波発声 / ラット / BDE-209 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的と方法]臭素系難燃剤BDE-209は可燃性の素材を燃えにくくすることができるため、耐熱性を高めたり、火災による被害を防いだりする目的で素材に添加される。しかし甲状腺ホルモンを攪乱することから、脳機能発達への影響が懸念されている。本研究ではBDE-209を1000mg/kg(高投与群)、500mg/kg(低投与群)、0mg/kg(統制群)、妊娠ラットに投与し、仔ラットの超音波コミュニケーション発達を解析した。投与期間は妊娠15日~出産21日目である。 [結 果]生後4、7、10、13、16日に母子分離し、仔ラットの超音波を解析した。投与群は発声時間が短縮し、周波数変調型発声の頻度も低下した。生後43~45日目の3日間、同腹同性の3匹を一緒にして闘争遊びを行い、超音波を解析した。高投与群の雄にのみ、周波数30kHz前後の長い発声を認めた。生後93~98日の6日間、異腹の雌雄をペアにして超音波を解析した。統制群と低投与群に周波数30kHz前後の長い発声を認めた。高投与群にはこのような発声がなかった。生後100~102日の3日間、異腹の同性をペアにして超音波を解析した。高投与群と低投与群の基本周波数が上昇し、発声時間は短縮した。さらに統制群に周波数30kHz前後の長い発声を認めた。高投与群と低投与群にはこのような発声がなかった。 [考 察]BDE-209は仔ラットの超音波を変異させた。変異した超音波は母親にとって気づきにくいため、仔ラットの生存が脅かされる可能性がある。成熟後のラットは、不快な感情状態になると周波数30kHz前後の長い発声を行う。とくに雄ラットは、闘争に敗北するとこの発声を行う。射精し終えた雄が雌を拒絶する際にもこの発声を行う。BDE-209は不快感を示す超音波発声頻度を低下させることから、ラットのコミュニケーション発達を阻害することが明らかになった。
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