2017 Fiscal Year Research-status Report
黄砂・PM2.5とアレルギー性結膜炎の理学・医学統合研究
Project/Area Number |
16K12611
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林 政彦 福岡大学, 理学部, 教授 (50228590)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 弘明 福岡大学, 医学部, 講師 (50309902)
高 良太 福岡大学, 医学部, 助教 (20782329) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アレルギー性結膜炎 / 黄砂 / 大気汚染物質 / 医学と理学 / 細胞モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の4系統の研究を行った。 1)大気組成観測:大気エアロゾルおよび微量成分ガスの観測を「福岡から診る大気環境研究所」の学内外の研究者とともに継続して実施した。新たな観測装置として,超微粒子の粒径分布観測,エアロゾル面積観測を2018年2月に開始した。また,2018年1月には,気象研究所,国立環境研究所による酸化能とエアロゾル元素組成の観測計画による集中観測を受け入れた。 2)エアロゾルの酸化能を評価するために採取したサンプルの酸化能分析と元素組成分析を行った。特定の金属元素と酸化能の間に経日変化のパターンの類似性が見られるなどの結果が得られている。 2)モデル黄砂の涙液による変質実験:モデル黄砂の涙液による元素溶脱特性を検討するために,超純水,洗眼液,緩衝液などによる透析実験を行った。カルシウムなどの溶脱が顕著に起こることや,ケイ素,アルミニウム,鉄,マグネシウムなどが溶脱せずに残ることで,溶脱後に,粘土鉱物等が消失し,アルミのケイ酸塩などの鉱物種が残存するようになることが示された。 3)黄砂による結膜炎発症の細胞試験:3次元角膜モデル細胞に,モデル黄砂や,黄砂の部分的な特性を代表するモデル粒子などを暴露し細胞組織の破損状況や,細胞破損に伴うサイトカイン類の検出試験などを行った。サンプル粒子として,黄砂のみならず,モデル都市粉塵なども用いることで,汚染物質と鉱物との寄与の違いなどについても検討できる材料を得つつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気組成観測については,計画通りの観測を継続している。新たな観測の開始,共同研究観測の受け入れなどは,発展的要素としてとらえている。 鉱物粒子のモデル涙液による変性試験は,新たな知見として注目に値する結果を得ている。 動物実験系の構築に時間と労力が必要との判断と,エアロゾルと角膜の相互作用について検討するために3次元角膜モデル細胞によるin vitro系の実験を行うことにした。予想に近い結果と予想とは異なる結果が得られており,炎症システム解明のためにより多様な実験系を構築する必要があることがわかり,この準備を継続して実施している。
|
Strategy for Future Research Activity |
大気エアロゾル観測は継続して実施する。また,2018年5月にはエアロゾル酸化能などに関する集中観測を再び受け入れる。 モデル涙液による黄砂変質について,大気中から採取した実黄砂サンプルの変性実験,個々の粒子変質の検討の実験,汚染物質による変質モデル黄砂の涙液による変性実験などを行う。 3次元角膜細胞モデルによるin vitro実験を展開し手実施する。
|
Causes of Carryover |
(理由)実験系をin vitroに変更するとともに,暴露微粒子の検討,試験的な実験などを行うことに時間を要したため,本格的な実験を開始するのが遅れた。消耗品として予定しているのが,これらの実験にかかわる試薬やモデル細胞であり,これらの支出が少なかったことで,予算の執行額が少なくなった。 (執行計画)2018年度は,本格的な実験を展開するために,モデル細胞や実験物品,モデル粒子の子乳に多額の予算を使う。また,学会発表,論文投稿などを進める。
|