2016 Fiscal Year Research-status Report
イオン移動度測定と誘導体化による未知環境汚染物質の二次元構造推定方法の開発
Project/Area Number |
16K12636
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40274740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 岳彦 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80293893)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未知環境汚染物質の二次元構造を推定する技術を開発することである。ここで言う二次元構造とは、官能基の置換位置を含めた詳細構造を指し、未知物質の合成に必要な情報をすべて含む。NMRを用いた従来の二次元構造推定では、共存する複雑な環境マトリックス成分を除去して微量な未知物質を単離・精製する必要があった。一方、単離・精製を伴わない構造推定は、精密質量分析により行われてきたが、分子式の決定および官能基の種類・個数の推定はできるものの、官能基の置換位置(二次元構造)を推定することは困難であった。そこで本研究では、農薬の未知環境変化体等をモデル物質として、従来の精密質量分析に加えて、イオン移動度測定と誘導体化を併用することで、単離・精製を伴わずに二次元構造情報を取得する技術の開発を目指す。 検討初年度は、本研究の原理を確認することを目標とした。まず、コンホメーション分布にほとんど広がりがない物質をCCS校正用物質とするため、多環芳香族類のアミン誘導体を中心に数物質を選定し、the trajectory methodにより計算CCS値を取得した。また、計算と併行して、選定した物質のイオン移動度の測定を行った。緩衝ガスとして安価な窒素を用い、TWIMSによる測定を実施した。以上により、CCS校正用剛直物質を用いることにより、現在、広く使用されているポリアラニン(高屈曲性物質)を用いて校正した場合と比較して、CCS測定精度が向上することを確認した。 以上の確認の後、既知物質して農薬ジノテフランを用いて、計算CCS値と実測CCS値が一致することを確認し、本研究の原理確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初予定どおり、本研究の原理確認を完了したことから、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、誘導体化した物質を検討する。この際、intactな状態ではCCSの実測または計算精度が不足するような異性体を取り上げ、そのようなモデル物質を誘導体化することにより検討可能になることを示すことを目標とする。誘導体化の条件を検討する前に、the trajectory methodによるCCSの算出を行い、誘導体化物のCCSの差を実測により観察可能なことを事前に確認する。モデル物質として、反応性を有するヒドロキシ基をもつ物質を選定する。ヒドロキシ基の誘導体化試薬として、ヒドロキシ基を誘導体化可能なbenzoyl chloride、diphenyl-imidazol benzoyl chloride、anthraquinonecarbonyl-chlorideなどの酸ハロゲン化合物を検討する。
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Research Products
(3 results)