2016 Fiscal Year Research-status Report
六甲山地における防災林機能を高めるエリアマネジメント
Project/Area Number |
16K12639
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古川 文美子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特命助教 (40753736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
近江戸 伸子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30343263)
田畑 智博 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (40402482)
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
武田 義明 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (90155028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防災・減災 / 森林ボランティア / エリアマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、神戸市周辺における所有形態ごとの樹種占有面積を比較するとともに、六甲山地を中心として竹林や人工林の分布を調査した。その結果、竹林分布面積の85%が私有地内に分布していること、緩斜地と耕作地や住宅地との境界域やその周縁に沿って分布していることがわかった。このような竹林が放置竹林とならないように整備することで、どの程度山地の傾斜部と耕作地/住宅地の緩衝帯として効果的な防災林として高めることが可能かを定量的に検討した。これを実施するため、無人航空機(UAV)を活用して竹林の林分構造を広範囲に把握した。UAVは、近年の技術革新によって災害被害調査などの様々な分野への応用が期待されており、本研究でもUAV画像解析を活用した竹林の林分構造の把握や地上部現存量推定方法を模索している。竹は地上植物の中でも成長力の早い循環性の高い材資源でもあり、この資源を有効活用できる仕組み作りを含めたエリアマネジメントを考えることは、地域社会との新たな共生の在り方を模索する上でも重要である。また、六甲山地の間伐林や竹をエネルギー資源として利用することによる防災効果の向上策についても検討するため、間伐林や竹のエネルギーとしての利用量を推計した結果、年間で約69,500GJのエネルギー賦存量があることが試算された。 続いて、森林ボランティアのもつエンパワーメントに注目し、神戸市において新たに森林ボランティアになった方を対象にアンケート・インタビュー調査を実施した。その結果を先行研究(ランダム抽出のアンケート結果)と比較することで、森林ボランティア活動を決定したプロセスに関して分析した。その結果、森林ボランティ活動の参加を決めた背景には、地域への愛着や地域コミュニティとの関係性よりも、森林整備に対する技能や知識が森林ボランティア活動への参加を促すきっかけになる可能性が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では六甲山地におけるフィールド調査を予定していたが、実際にフィールド調査を行ったところ、私有林では所有者が不明であったり県外在住であったりする場合も多く、管理放棄された状態になっており、所有者に直接、私有地内で調査をする許可を得ることが難しかった。次善策として、六甲山で森林ボランティアを実施している様々な団体の森林整備活動に参加するとともに、六甲山の植生や資源利用、地元の森林整備方針に関して聞き取り調査を実施し、所有者の方に調査協力の依頼をおこなった。その結果、所有者からも私有地内で調査を行う許可を頂き、地元のボランティアの方々からも調査に対してもご協力を頂ける事となり、当初の予定よりも適切な方法で研究を推進できる見込みとなった。 また、申請段階では、国・公有林と私有林の各調査区画内における表層浸食土砂量を比較することを検討していたが、上述の理由から測量計の設置が極めて困難であった。そのため、UAVや空間情報データ等を用いて間伐材・竹の分布と防災機能との関係を検討することで、上述の検討内容を補完することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
所有者や地域の人々の意思決定の影響が大きい私有林における竹林に注目することは、調査遂行が難しい反面、現代社会の課題を浮き彫りにしているともいえる。竹林を通して地域の自然の特性を理解するとともに、森林整備が自然のもつ防災林機能にどのように影響を与えているのかを定量データとして提示することを目指す。そして、防災林としての機能の維持・向上を目指した管理を行うために、森林ボランティアや企業のCSR活動のエンパワーメントをどのように森林整備に巻き込んでいけるのかを検討する。将来展望としては、生態・工学・社会科学の学際的アプローチによって六甲山地における環境保全と防災を融合させたエリアマネジメントを模索する。エリアマネジメントとは、住民が主体的に地域をつくり、育てることである。六甲山地では、すでに多く個人、団体によって森林ボランティア活動が行われている。防災・減災の担い手として森林ボランティアのもつエンパワーメントに注目し、六甲山の自然がもつ防災機能を高めるマネジメントを地域の人々との協働の中で見出していきたい。
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Causes of Carryover |
申請段階では六甲山地におけるフィールド調査を予定していたが、実際にフィールド調査を行ったところ、私有林では所有者が不明であったり県外在住であったりする場合も多く、管理放棄された状態になっており、所有者に直接、私有地内で調査をする許可を得ることが難しかった。そのため、当初の予定していた国・公有林と私有林の各調査区画内における表層浸食土砂量を比較の検討が、上述の理由から測量計の設置が極めて困難になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次善策として今年度、六甲山で森林ボランティアを実施している様々な団体の森林整備活動に参加するとともに、六甲山の植生や資源利用、地元の森林整備方針に関して聞き取り調査を実施し、所有者の方に調査協力の依頼をおこなった。その結果、所有者からも私有地内で調査を行う許可を頂き、地元のボランティアの方々からも調査に対してもご協力を頂ける事となった。そこで、次年度では国・公有林と私有林の各調査区画内における測量計を用いた表層浸食土砂量を比較の代わりに、無人航空機(UAV)や空間情報データ等を用いて間伐材・竹の分布と防災機能との関係を検討することで、上述の検討内容を補完することとする。
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