2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12647
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新家 弘也 筑波大学, 生命環境系, 特任助教 (30596169)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アルケノン / Tisochrysis / ハプト藻 / 多糖 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ハプト藻5種のみが産生する脂質アルケノンに着目し、その代謝調節の仕組みを阻害剤や変異体を用いて解析した。5種の内、既に変異体を所得しているTisochrysis luteaを本研究では用いた。ハプト藻Emiliania huxleyiでは、貯蔵物質と考えられた中性多糖ではなく脂質アルケノンが貯蔵物質として機能していることが示されている。そこで基礎的情報を得たところ、E. huxleyiとT. luteaで中性多糖は全有機炭素の約5%及び15%を占め、アルケノンは約18%及び9%であった。更に、暗条件に移すことでエネルギー源として主にどちらを利用しているか調べた。その結果、E. huxleyiでは報告の通りアルケノンが主に利用されていたが、T. luteaでは中性多糖が利用されており、同じアルケノン産生種でもその代謝調節が異なる事が明らかになった。続いて、アルケノンを産生しなくなった変異体について解析したところ、生育、炭素固定量及び中性多糖量に差は見られなかったが、GC/MS分析からアルケノンの代わりにトリグリセリド(TAG)を蓄積していることが示唆された。このことは、TAGとアルケノン合成系が同じ炭素フローを利用していることを示唆し、TAG合成が促進する条件でTAG合成を阻害することにより、アルケノン合成量の促進が見込める新たな知見である。また、アルケノン合成量の増加した変異体をFT-IRで分析したところ、全有機炭素内のアルケノンが増加した代わりにタンパク質の割合が減少していた。同様の現象が、アルケノン産生種であるがTAGをほとんど合成しないE. huxleyiで窒素欠乏条件時に報告されている。そのため、変異体におけるアルケノンとTAG蓄積が通常時と窒素欠乏時でどの様に変化するのかを調べることで、アルケノンとTAG合成の関係を解明する糸口となることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、アルケノンを産生する野生株と産生しない変異株で、アルケノン生産の温度依存性や脂質組成や多糖の挙動といった基礎的情報を整えることができた。また、平成28年度に予定していた「多糖及び脂質の蓄積量変化と14C 放射性同位体ラベルによるその合成量変化を測定」の内、いくつかの代表的な変異体で脂質及び多糖の分析を行ったが、放射性同位体を用いた合成速度解析が行なえていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、アルケノンを産生する株と産生しない株の基礎的情報が得られたので、ゲノム比較解析を行なう。これについては、既にデータを取得済みである。続いて、進捗の遅れている変異体の多糖及び脂質量の分析と放射性同位体を用いた合成速度の解析を行なう。この際に、新たに明らかになったTAGとアルケノンの関係も同時に測定し、アルケノン量の減少に対する細胞内成分の影響も評価する。 その後、予定にある阻害剤による多糖と脂質の変化を測定し、有用株についてトランスクリプトーム解析を行う。
|
Causes of Carryover |
放射性同位体を用いた実験を計画していたが、予定が遅れたため次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定通り、次年度放射性同位体を用いた実験を行うために使用する。
|