2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12647
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
新家 弘也 関東学院大学, 理工学部, 助教 (30596169)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルケノン / Tisochrysis / ハプト藻 / 脂質 / 多糖 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ハプト藻5種のみが産生する脂質アルケノンに着目し、その中の1種であるTisochrysis luteaを用いた。これまでの結果より、T. luteaではTAGとアルケノン合成系が同じ炭素フローを利用していて、窒素欠乏などのストレス条件下でTAG(トリグリセリド)合成にその炭素フローが切り替わることが示唆された。そこで、窒素欠乏とリン欠乏時にTAGとアルケノンの合成がどの様に変化するかを調べた。その結果、リン欠乏ではTAG合成が、窒素欠乏ではアルケノン合成が促進されることが示唆された。異なる欠乏条件下でのアルケノンとTAG合成のスイッチングは、これら合成系の制御機構解明の手掛かりとなることが期待できる。 変異体解析では、アルケノン高産生株からアルケノン高生産の要因を、アルケノン非産生株からアルケノン合成系を探った。アルケノン高産生2株についてTAG蓄積量を調べたところ、1株では減少していたが、もう1株ではアルケノン蓄積量の増加率と同程度増加していた。興味深い事に、アルケノン高産生2株では野生株と比較して最大光合成活性が1.5倍ほど上昇していた。そこで、光合成増加によるアルケノン合成量の増加を期待し3倍の光強度で培養したが、アルケノン合成量に変化は見られなかった。次に、野生株とアルケノン非産生株のゲノムを比較解析した。この際、アルケノン低産生株も同時に比較解析したところ、野生株に対して両変異体で併せて151箇所、遺伝子に影響しそうなもの4箇所の変異が見つかった。その中でも両変異体で共通の遺伝子に変異が合ったものが1つあった。これまでアルケノン合成系についてはほとんど解明されておらず、この遺伝子がアルケノン合成系を解明する糸口となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在まで、様々な条件で培養を行いTAGやアルケノン合成の促進される条件を探ってきた。その結果いくつもの条件を見つけたが、ほとんどが中性脂質の分析のみで極性脂質や多糖画分の分析が滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、進捗の遅れている多糖及び脂肪酸の分析を行なう。次に、最大光合成活性が上昇していたアルケノン高産生2株について、二酸化炭素濃度と光強度をあげて培養を行い、その際のアルケノン合成量を調べる。続いて、既にデータを取得しているアルケノン高産生株とアルケノン非産生株のRNAseqの解析を行なう。そして、RNAseqから得られた遺伝子情報を基に、これまでTAGやアルケノン合成が促進された条件での遺伝子発現解析を行ない、これら中性脂質合成に関与する遺伝子候補を絞り込む。また、ゲノム比較解析で得られた遺伝子について、アルケノン合成への関与をアルケノン非産生種と比較解析や遺伝子の機能解析を行なうことで探っていく。
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Causes of Carryover |
(理由) サンプルの解析用に筑波大学への出張を予定していたが、サンプルの準備が間に合わなかったため。 (使用計画) 予定通り、サンプルの準備が出来次第出張に利用する。
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Research Products
(1 results)