2016 Fiscal Year Research-status Report
メタン細菌高集積汚泥で切り拓く生物学的二酸化炭素変換促進技術の開発
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16K12650
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 憲成 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00470592)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタン菌高集積汚泥 / 二酸化炭素 / メタン / 海水 / 消化汚泥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、下水汚泥から作製した「メタン菌高集積汚泥」が二酸化炭素を効率良くメタンに変換するという「二酸化炭素を変換利用する能力」を活用して、バイオエネルギーなど、次世代に必要な有用物質を生産する技術を確立することを最終目的とした研究である。 平成28年度においては、はじめに、メタン菌高集積汚泥によって生成されたメタンが、炭酸ガス由来であることを証明するため、13Cの二酸化炭素または重炭酸ナトリウムを供給し、メタンガスを生成させ、そのメタンガスの炭素が13C由来であることを確認した。二酸化炭素由来では77%、重炭酸ナトリウム由来では99%のメタンが13C由来であった。また、二酸化炭素と水素ガスの混合比を通常の1対4の混合比から、1対2、1対1などの混合比にて、二酸化炭素の変換を行ったところ、1対4の条件では、変換された二酸化炭素量のほとんどがメタンへと変換されていたのに対し、1対2や1対1などの水素ガス供給量が少なくなった条件では、変換された二酸化炭素量の50%程度が、メタン以外の何らかの変換産物に変換されていることが示唆された。現在、どのような変換産物が生成されたのかを検証している。さらに、このメタン菌高集積汚泥を用いて、海水中に溶存している炭酸系イオン(主に重炭酸イオン)からのメタン生成を試みたところ、顕著にメタンが生成されていることを明らかにした。加えて、消化汚泥がメタン菌高集積汚泥の代替となる可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、メタン菌高集積汚泥によって生成されたメタンが、炭酸ガス由来であることの証明、水素ガス供給量を少なくした場合に二酸化炭素がメタン以外に変換されている可能性、海水を資源としたメタンガス生成、メタン菌高集積汚泥の作製時間の短縮など、本研究で計画していたことをほとんど実施できたものと考える。また、現在、論文を一報、改訂中であり、その進捗は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、次のように研究を進める。 1.混合ガスの混合比を変化させた場合に、変換された二酸化炭素量の50%程度が、メタン以外の何らかの変換産物に変換されていることがわかった。今後は、これらの変換産物を特定すると共に、平成28年度と同様に、13Cの二酸化炭素を使い、その変換産物が二酸化炭素由来であるのかを明らかにする。 2.二酸化炭素からのメタン生成に関わる微生物種の分離とその特定を行い、遺伝子相同性解析などの手法を用いて、菌種を明らかにする。 3.海水からのメタン生成に関わる微生物種の分離とその特定を行い、遺伝子相同性解析などの手法を用いて、菌種を明らかにする。 4.メタン菌高集積汚泥による二酸化炭素変換におけるクォーラムセンシング分子の添加の影響、微生物相互作用の変化の影響などを明らかにする。 5.消化汚泥を用いた二酸化炭素変換の効率の調査とメタン菌高集積汚泥との活性比較、ならびに海水からのバイオエネルギー生成についても検証する。
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Causes of Carryover |
研究室活動に必須なシェーカーなどの機器が故障していたため、新規に購入する必要が、平成28年度に発生した。ある程度まとまった予算を確保するため、本科研費の支出を可能な限り減らすという支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度中に、研究活動の汎用機器であるシェーカーなどの機器を購入し、本研究が円滑に進むように支出させていただく予定となっている。
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