2016 Fiscal Year Research-status Report
循環共生型地域づくりによるグリーン成長の実現可能性に関する研究
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16K12656
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大熊 一寛 東北大学, 法学研究科, 教授 (10773301)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域産業連関分析 / 地域イノベーション / 進化経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環共生型地域づくりの経済効果を把握するため、宮城県南三陸町等の地域の事例について現地調査を含め調査し分析した。ヒアリング等により、木質バイオマス及びバイオガスの事業の実施による地域内関連産業の需要増加の効果及びエネルギー移入削減等の効果を定量的に把握するとともに、地域イノベーションにより新たな技術・システムが確立し他地域に波及するという現象を確認した。 このうち前者の定量的効果については、地域産業連関表を作成し、環境関連部門を追加することにより、地域内波及効果の定量的分析を行い、暫定的な推計結果を得た。なお、こうした分析を被災地について行った研究、またバイオガス事業について行った研究は、これが初めてであると承知している。 このような域内生産の増加及び地域イノベーションの効果とマクロ経済との関係を分析するための理論的枠組みを模索するため、幅広い関係理論について調査し検討した。具体的には、二部門又は多地域のカレツキアン・モデル、内生的経済成長理論の応用可能性、経済地理学等におけるイノベーション関連理論、進化経済学におけるミクロ・マクロの接続の概念及び地域的な共進化の概念等について検討した。 以上を踏まえ、地域的取組による共進化とイノベーションの可能性及びそれらとマクロの経済社会との相互作用の可能性について、事例及び進化経済学等の概念に基づき分析して仮説を設定し、現時点での成果を学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、再エネ活用等による循環型の地域づくりが国全体の経済成長につながりうるのかという問いに答えるべく、地域の事例分析を行うとともに、これをマクロの経済理論分析と接合する理論方法を研究することを目的としている。 地域の事例分析については、宮城県南三陸町等の事例調査により、経済取引に表れる効果を地域産業連関表による分析することができたほか、経済取引に直接表れない地域イノベーションの発生及び波及の効果についても確認することができた。 こうした効果をマクロ経済と接合する理論的検討はもとより容易な課題ではなく、数式的・定量的分析については模索の段階にあるが、進化経済学等の理論を応用した概念的分析については一定の成果を得ることができたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
地域的取組による共進化とイノベーションの可能性及びマクロ経済との相互作用の可能性について、進化経済学、経済地理学、エコロジー経済学等の関連理論をより広く参照しつつ、さらに研究を深め、論文として発表していくこととしている。 また、宮城県南三陸町の取組の効果に関する地域産業連関分析について、論文としての発表も視野に、さらに完成度を高めるための作業を進めることとしている。 さらに、地域経済効果とマクロ経済との関係を数式モデル等を用いて定量的に分析する方法の可能性についても、引き続き模索していく方針である。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り支出し研究を実施したが、執行の都合上、少額が残ったもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の残額を加えつつ、基本的に当初研究計画に従って支出し研究を実施する予定。
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