2016 Fiscal Year Research-status Report
製品のユーザ体験および機能のΔDesign Mapを用いたデザイン発想支援
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16K12668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 存 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20212251)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デザイン設計支援 / 創造性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、特徴的なデザイン事例を収集、記述、蓄積してデザイン概念空間を構成し、その事例群の共通性と相違性を系統的、網羅的に解析することにより、優れたデザインの発想支援を行う方法論を構築しソフトウェアツールとして実装することである。工学的設計とプロダクトデザインの両面で優れた発想を得るためのデザイン概念空間として、(工学的)設計論で用いられる「機能」、「挙動」、「構造」の考え方と、近年プロダクトデザインの分野で重視されている「ユーザ体験」の考え方を、別個ではなく統合した、デザイン差分マップ(Δ design map)を提案していることが、本研究の特徴である。 以上の目的を達成するため、平成28年度は、まずデザイン差分マップの記述要素である、機能、挙動、構造、ユーザ体験の定義を明確化した。定義された機能、構造、ユーザ体験およびそれらの相互関係を、計算機処理可能な形式で記述するための、XML(Extensible Markup Language)の構文を設計した。その構文に基づき、デザイン差分マップデータを読み込み計算機内にモデル展開する処理プログラムを実装した。 そして、異なるカテゴリの14事例(置時計、懐中時計、腕時計、デジタル腕時計、Gショック腕時計、掃除機、ルートサイクロン掃除機、コードレス掃除機、ロボット掃除機、耳掻き、ライト付き耳かき、イヤースコープ、紙巻きたばこ、加熱式たばこ)のデザイン差分マップを構成し処理した結果、イヤースコープから掃除機の新たな発想が得られる可能性を確認し、本研究のアプローチの有効性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画にある、(1)デザイン差分マップにおける機能、挙動、構造、ユーザ体験の定義の明確化、(2)デザイン差分マップの記述構文の決定と処理プログラムの実装、(3)デザイン差分マップのプロトタイプの構築、(4)意味に基づく語句比較プログラムの実装、(5)デザイン事例記述の比較および差分抽出技術の構築および実装、がほぼ計画通り行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まず平成28年度に保留していた「挙動」の定義を明確にし、デザイン差分マップの構成要素に加える。そして、インターネットからのデータ収集など、人間一人の経験や記憶を超える多数のカテゴリの多数のデザイン事例を収集し、大規模なデザイン差分マップを構築する。それを用いて、既存の事例からの類推、従来存在しない仮想事例の生成と検証など、発想のトリガーとなる情報を生成する方法論を構築し、ソフトウェアツールとして実装する。それらを用いて、本手法およびツールがなければ得られなかったようなデザインの発想が導けるかどうかにより、本研究の有効性を検証し、その結果を論文にまとめ発表する。
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Causes of Carryover |
研究成果を査読のある国際会議(平成29年度開催)に投稿し、それが採択された場合に海外出張旅費が発生するため、予算執行に余裕を持たせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿した講演論文が査読のある国際会議に採択されたため、平成28年度と同様なペースでの予算執行に加え、米国出張の海外旅費として使用する。
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