2016 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ・ワークプレイス・デザインにおける行動観察の評価指標研究
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16K12670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩瀬 隆之 京都大学, 総合博物館, 准教授 (90332759)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インクルーシブデザイン / ワークプレイス / デザインリサーチ / ダイバーシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「多様な人材が創造的に働けるワークプレイスのデザイン」に資する行動観察指標の開発を目指している。平成28年度は、ワークプレイスを観察するためのアナログ調査手法とIoTなどのデジタル調査手法とを試作・試行した。具体的には、時間・移動・認知に制約がある人材が活躍する特例子会社ならびに障害者就労支援施設においてデザインリサーチならびにデザインワークショップを実施した。デザインリサーチにおいては、とくに時間制約のある人材については、工程区分が執務空間に限定したワークプレイスを用意されることで心理的負担を軽減する工夫がなされたり、認知制約のある人材については、制約の異なる他者とのコミュニケーションを図る情報保障勉強会の設置や柔軟なタスクフローの設計など多様な周辺環境整備が有効なことが分かった。ここでワークプレイス改善に必要な特徴抽出が可能な行動観察手法を、特定の研究者だけでなく広く簡便に関心ある実施者にも再現可能な行動観察スキルを習得できるトレーニングメニューを先行開発することが、次年度の行動観察指標の開発をより効率的に進めるうえで重要であることが分かった。デザインワークショップにおいても、就労環境、アートアトリエ、科学教育施設など多様な作業空間を対象とし、視覚に障害のある人や聴覚に障害のある人、発達障害など固有の制約を抱える多様なユーザーや子どもなどペルソナを構成しにくいユーザーをエクストリームユーザーとして迎え、インクルーシブデザインによるワークプレイスの改善案を提示した。こどもがデータを使いこなすための模擬ワークプレイスのデザインやケア・アートとIoT研究会での成果からは、IoTを行動管理のために使用するのではなく、当事者にとっての拡張・創造・尊厳のためのデザインが重要である。この知見を元にH29年度に行動観察指標の整理、確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、デザインワークショップにおいて、多様なユーザーや子どもなどをエクストリームユーザーとして迎え、文化人類学的なアナログ調査手法やIoTなどのデジタル調査手法とを試作・試行した。とくに障害者就労支援施設では、ケア・アートとIoT研究会を開催し、加速度センサや赤外線センサを組み込んだIoTシステムとIFTTTサービスなど広く利活用されているシステムの統合によって、施設内での新たなはたらき方に注目したサービスデザインワークショップを実施した。時間・移動・認知に制約がある人材が活躍する作業空間でのデザインリサーチにおいては、ワークプレイス改善に必要な特徴抽出が可能な行動観察手法を、特定の研究者だけでなく広く簡便に関心ある実施者にも再現可能な行動観察手法として確立し、これをトレーニングする特定のスキル習得メニュー開発を先行することが、次年度の行動観察指標の開発をより効率的に進めるうえで重要であることが分かった。日進月歩のIoTのシステム技術により、計画段階で予定していたよりも廉価版で簡便なシステムによる試行の選択肢が研究期間内に増え、行動指標開発の要件抽出のためのプロトタイピング回数を増やすことができ、より精度の高い要件定義が可能となった。そこで当初予定していた二つの開発順序を入れ替え、カルチュラル・プローブのツールキット開発の一部と行動観察手法のメニュー開発において工数の相互吸収を図ることで当初計画以上に精度の高い指標開発が期待される。また、本研究では、障害者就労を含めたはたらき方改革の機運の中で、特例子会社や障害者就労支援施設における新たな試行、研究への関心の高さに後押しされた新しいコミュニケーションに注目している。とくに障害を抱える当事者やケアサポートスタッフ自身とのコミュニケーションを密に行うことで、現場で実践する行動観察に活用可能な準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、エクストリームユーザーに限らず、ワークプレイスの利用者自身が評価-リデザインできる行動観察のための評価指標の確立を目指す。実際の障害者就労支援施設などとの密な情報共有を図り、ケアスタッフらによる試行結果のフィードバックを得るなどして、実践現場で通用する指標開発を目指す。ワークプレイスの利用者自身やケアスタッフらが行動観察をして、ワークプレイスそのものの評価-リデザインするサイクルをまわすための運用手法も同時に検討することで、より有効活用されるような評価指標の確立ができると考える。先行開発した行動観察手法のトレーニングメニューと研修運用面とから検討した新たな行動観察手法に資するツールキット開発を実施し、当初計画以上に精度の高い指標開発を目指す。また、実験過程で得られる観察に関しては、個人情報が特定できないように加工したデータ保管、データ蓄積上のセキュリティに配慮しているが、IoTをターゲットとしたウィルスなどIoTによるデータ取得後ではなく取得中のセキュリティ問題という新たな課題も懸念されることから、最新動向に配慮したシステム開発を心がける。
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Causes of Carryover |
時間・移動・認知に制約がある人材が活躍する作業空間でのデザインリサーチにおいては、ワークプレイス改善に必要な特徴抽出が可能な行動観察手法を、特定の研究者だけでなく広く簡便に再現可能な行動観察手法として確立し、これをトレーニングする特定のスキル習得メニュー開発を先行することが、次年度の行動観察指標の開発をより効率的に進めるうえで重要であることが分かった。また日進月歩のIoTのシステム技術により、計画段階で予定していたよりも廉価版で簡便なシステムによる試行の選択肢が研究期間内に増え、行動指標開発の要件抽出のためのプロトタイピング回数を増やすことができ、より精度の高い要件定義が可能となった。そこで当初予定していた二つの開発順序を入れ替え、カルチュラル・プローブのツールキット開発の一部と行動観察手法のメニュー開発において工数の相互吸収を図ることで当初計画以上に精度の高い指標開発が期待される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に新たに開発した行動観察手法のスキル研修メニューと廉価版で簡便なシステムにより試作したIoTによるデジタル調査手法とから、改めてカルチュラル・プローブのツールキット開発の仕様要件を整理し、次年度当初から開発を開始する。その折、実験過程で得られる観察に関しては、個人情報が特定できないように加工したデータ保管、データ蓄積上のセキュリティに配慮しているが、IoTをターゲットとしたウィルスなどIoTによるデータ取得後ではなく取得中のセキュリティ問題という新たな課題も懸念されることから、最新動向に配慮したシステム開発を心がける。
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