2016 Fiscal Year Research-status Report
鉄骨考古学による途上国デザイン史構築のための方法論の研究
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16K12674
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 正和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60281549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田上 健一 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (50284956)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史的建築 / バナ―キュラー建築 / デザイン史 / 発展途上国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は植民地期の住居や店舗などのバナキュラー建築を考古学的手法により編年し、発展途上国のデザイン史を構築する方法論を開発することである。 平成28年度はイギリスおよび英領における鉄骨生産、製品の文献調査・現地調査を実施し、暫定的な鉄骨編年の作成を目標とした。英領期の建築物の梁を構成しているのは、断面形状からT鋼、I鋼、H鋼などと呼ばれる鉄骨であり、これらの鉄骨の形状属性を分析すれば製造会社、製造機械による違いを見分け、その変化を時間軸に投影することが可能ではないかと考えられる。 まずイギリスから東南アジア植民地への建築技師の移動、建築用鉄製品の生産と移動に関する文献調査、鉄骨や鉄製品の製造当時のカタログの収集等を行った。平成28年9月11日から9月20日に旧英領地であるマレーシア・クアラルンプール、ペナン、シンガポールにおいて建築物の現地調査を、続いて平成29年3月7日から3月17日にオーストラリア・メルボルンにおいて現地調査を実施した。実測調査したイギリスのドーマン・ロング社製のI鋼と1900年代のカタログから、断面形状により年代の特定が可能であること、調査した建材に数件の製鉄会社の刻印が確認され、会社の存続期間等の記録と照合することで年代を特定できる可能性が明らかとなった。また、雨樋やフェンス等の鋳鉄製品で、製造当時の鉄製品のカタログに掲載された製品と類似のものを現地調査で確認したが、年代の特定にはさらに調査が必要であることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画はイギリスおよび英領における鉄骨生産、製品の文献調査・現地調査を実施し、暫定的な鉄骨編年の作成をすることであった。それに対し、研究実績のように、建築用鉄製品の生産と移動に関する文献調査や鉄製品のカタログ等の資料収集を行った。さらに、マレーシア、シンガポール、オーストラリアで鉄骨部材実測等の現地調査を実施し、年代推定の可能性を明らかにした。以上のことから、研究はおおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄骨部材の実測から明らかとなった年代推定の可能性を検証するため、旧英領地における鉄骨部材の実測を継続する。建設年代が分かるものが多いバングラデシュ・ナラヤンガンジ県のパナムナガール地区の建造物群にて調査を行う。また、イギリスおよび英領における鉄骨生産に関する調査も継続し、製造元から主に英領の中で鉄骨がどう広がって行ったか、植民地建築の設計者などについて情報を収集する。
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Research Products
(5 results)