2016 Fiscal Year Research-status Report
実体ブロックを用いたプログラミング学習環境の研究と開発
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16K12675
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
迎山 和司 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (20363715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 泰 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (00272188)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子どもの学習 / CAI / タンジブルユーザインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,研究目的を(1)プログラムの構造が実体化することで協調作業可能なプログラミングツールの開発, (2)新たなプログラミングツールとそれらを用いた活動のデザイン手法の確立,とした.研究実施計画では,平成28年度にプログラミングツールの制作とワークショップの企画と実施を行うとしていた.その計画通り,プログラミングツールの開発とワークショップの開催を行った.開発したプログラミングツールは研究目的(1)に該当するものである.そして,ワークショップの開催は,プログラミングツールの評価と,研究目的(2)を達成するための初期段階に該当する. 開発したプログラミングツールはPlugrammingと名付けた.プログラムコマンドをモジュールブロックとして実体化し,プラグケーブルで連結することでプログラミングを行うことができる.この時,プラグケーブルによって,卓上でプログラム全体の構造が視覚化される. このPlugrammingを用いたワークショップを,プログラムの基本的な概念である順次と分岐を体験するためのものとして企画して実践を行った.ツールの物理的制約が学習者同士の自然な協力体制を誘導すること,出来上がったプログラムの動作が卓上で一覧できることが参加者同士の議論を引き起こしていることが明らかになった. 以上のPlugrammingの開発とワークショップの実施により,プログラムの構造の実体化が協調作業を促すことが確認できた.そのため,研究の方向性が正しいことが確認できた.そして,引き起こされた協調作業の具体的な記録は,今後のツール開発とデザイン手法の確立において分析・考察の対象とすることができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画に挙げたプログラミングツールの開発とワークショップの実施は,予定通り行うことができた.その結果,プログラミングツールはワークショップの実践を通して,順次・分岐等のプログラミングの基本概念を協調学習するための支援を行えることが明らかになった. Plugrammingの開発では,プログラムの基本概念の順次・分岐・反復のうち,順次と分岐を表す機能の実装が完了した.残る反復を表す機能も実装可能であると考えている. ワークショップ実践では,Plugrammingを用いたものを2回開催した他,Scratchを用いたワークショップを8回開催した.全10回のワークショップは全て子どもたちを対象としたものであった.Plugrammingを用いたワークショップでは,子どもたちの間にどのような協調作業が起きたのかを観察することができた.そして,Scratchを用いたワークショップでは,協調作業を起こすための仕組みを試行錯誤し,協調作業が起きる様子を観察できた.それぞれのワークショップでは,研究者による観察,記録した写真,子どもたちの制作した作品のソフトコピー,そして子どもたちとスタッフの記述したふりかえりをデータとして収集することができた. 現在,このデータの比較と分析・考察によってPlugrammingの評価と,協調学習を起こすための要件を抽出しているところである.途中ではあるが,Plugrammingの物理的特性が協調作業の促進に有用であることが分かっている.また,継続するワークショップの中で繰り返し参加する子どもたちの間に親しい関係が生まれていることが観察されている.この子どもたちの関係性の変化と作品の変化の詳細な記述を行うことで,目的である活動のデザイン手法をより良いものにできるかどうかを検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,プログラミングツールの開発とワークショップ実践を継続しつつ,ツールの評価と,協調作業を起こすための要件の抽出結果をまとめる.また,子どもたちの意識や関係性が変化する過程やきっかけに着目した分析が必要だと思われる. プログラミングツールの開発では,現在用いている技術を継続して使用して反復を表すモジュールブロックを開発する.この反復を表すモジュールブロックには,他のモジュールブロックの動作を指定した回数繰り返して行う機能を持たせる.同時に,回数を指定するための数字を表すブロックの制作も行う.ワークショップ実践では,プログラミングの基本概念を学ぶことの他に,参加者が何らかの作品を作って持ち帰ることができる企画を実施したいと考えている.この作品作りを含むワークショップによってPlugrammingを用いた活動に多様性があることを明らかにしたい. ツールの評価と,協調作業を起こすための要件の抽出には,子どものふりかえり内容とワークショップ中の映像や写真を用いる予定である.加えて,子どもたちの作品を分析することでどのような学習が行われていたかを考察する. 子どもたちの意識や関係性の変化は,繰り返し参加する子どもたちのひとりひとりについて詳細に記述を行うことで考察することができると考えている.具体的には,子どもたちのふりかえりの記述から意識の変化を考察する.また,関係性の変化はワークショップ中に記録した写真と,スタッフのふりかえりから考察する.これらの考察によって,協調作業を支援するための活動方法とプログラミングツールをデザインするための要件について検討する予定である.
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Causes of Carryover |
当該年度予算を計画通り執行したが若干の余剰分が出たために繰り越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会の招待講演などの機会を得たため当初予定より計画が早まる予定である. そのため1年次を繰り越し3年次を前倒しして執行する予算を集中させて,(1)HCII2017招待講演(カナダへ研究者2名派遣)・(2)ScratchConference2017(ハンガリーへ研究者2名派遣)・(3)反復機能の追加のための開発費,以上の3点を重点的に執行する.
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Research Products
(4 results)